約 774,011 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1431.html
(作者の都合によりいきなりクライマックス) ハルヒを孤立させるため、キョンの篭絡を計った朝倉 しかし天性のニブチンであるキョンはなかなか朝倉になびかない。 業を煮やした朝倉は正攻法、搦め手を含めてキョンへのアタックを続ける。 そのうちにだんだんキョンのことが好きになってしまうが、朝倉は認めようとしない。 あくまでハルヒを孤立させるためという建前を貫き通していた。 そしてハルヒの誕生日前日、朝倉はわざわざ翌日をキョンに告白する日に定め、 彼につきまとう。なぜかキョンもその日に限って朝倉と仲良くしていた。 ハルヒはそんなキョンに素直になれず、悪態をついてしまう。 そして誕生日当日、キョンと朝倉が仲良くしている姿を見るのがイヤだったハルヒは 学校を休んでしまう。 ハルヒ「あーあ、今日は誕生日だってのに、なにやってんだろ私・・・」 学校をサボッたハルヒは、ベッドの上でゴロゴロしていた。 不意にハルヒの目から涙が流れる。 ハルヒ「やだ!私、別に悲しくなんか・・・キョン・・・バカキョン・・・ アイツ、とうとう朝倉と付き合うのかな・・・」 とうとうハルヒの目から大粒の涙が溢れ出してきた。 ハルヒ「キョン・・・なんであんなヤツと・・・バカキョン・・・うぇ・・・・グスッ・・・・」 ハルヒは耐え切れなくなり、ついに大きな声を上げて泣きはじめた。 その日、キョンは早めに学校に着いたが、一向にハルヒは教室に現れなかった。 昨日朝倉と急接近したせいか、それとも他に理由があるのか、 キョンは妙にそわそわしていた。 朝倉「キョン君、おはよ!」 キョン「あ、ああ。おはよう。昨日はサンキューな」 朝倉「別にお礼なんていいわ。私も楽しかったし」 その日はなぜか朝倉も少し浮かない顔をしていた。 キョンはその日の授業をうわの空で聞き流し、午後の授業が終わると急いで部室に向かおうとした。 朝倉「待って、キョン君」 キョン「ん、どうした?」 朝倉「少し話があるの・・・いいかな?」 キョン「・・・ああ、かまわないぞ」 一方、ハルヒはその日一日を泣きながら過ごしていた。 キョンのことを思い浮かべては涙を流すの繰り返しである。 そのせいで夕方ころには目を真っ赤に腫れ明かしていた。 不意にハルヒの携帯が鳴り出した。着信先を見ると、朝倉からである。 ハルヒ「フン、どうせキョンと付き合うことになったことをみせつけたいだけなのよ」 ハルヒは朝倉からの電話を無視していたが、あまりにもしつこくかかってきたので 着信8回目にしてついに出てしまった。 ハルヒ「うるさいわね。なんか用?」 朝倉「とんだご挨拶ね。・・・今からちょっとだけ顔を貸してもらえない?」 ハルヒ「おあいにく様!こっちは体調不良で寝てるの。また今度にしてちょうだい」 朝倉「ウソおっしゃい。どうせ仮病でしょ?川沿いの公園のベンチで待ってるから。 絶対くるのよ!」 ハルヒ「もしかしてキョンも一緒にいるのかな・・・」 キョンのことを思い出すと、また泣きそうになる。 ハルヒ「・・・しかたないわね。このままずっと寝てるわけにもいかないし」 ハルヒは朝倉に会いに行く決意を決めると、すばやく準備をして家を出た。 朝倉「遅いよ」 ハルヒ「あんたが突然呼び出したりするからよ。んで、何の用?さっさと済ませちゃってよ」 ハルヒは覚悟を決めていたが、朝倉を前にするとやはり心が痛んだ。 朝倉「・・・そんなに構えなくていいわ。たぶん、あなたにとってはいい話だろうから」 ハルヒ「どういうことよ?」 朝倉「なんだか、どうでもよくなってきちゃった」 朝倉の言葉に、ハルヒはわけがわからずに聞き返した。 ハルヒ「はぁ?意味わかんないわよ」 朝倉「キョン君のことよ」 キョンの名前を出されて、ハルヒは一瞬ビクっとした。 朝倉「私ね、はっきり言ってあなたのことが嫌いだった。私と同じぐらい、いやそれ以上に 勉強やスポーツができて、顔もかわいいあなたのことをね」 ハルヒ「・・・・・」 朝倉「はじめはね、クラスで孤立してるあなたを見て安心してたの。 でもね、サークルを作ってキョン君と仲良くし始めたあなたを見て、 なぜかすごく憎らしく思えてきたの」 ハルヒ「それで私を目のカタキにしてたってワケ?とんだ迷惑ね」 朝倉「その通りよ。だからあなたからキョン君を奪おうと思ったの・・・ 別に本気で好きだったわけじゃないのよ。ただあなたを困らそうとしただけ」 ハルヒ「・・・・・」 朝倉「それでね、さっきキョン君に告白してきたんだけど」 ハルヒ「!?・・・やっぱり」 朝倉「でもね、断られちゃった。彼、ちゃんと好きな人がいるらしいわ」 ハルヒ「どうして・・・?だってアンタたち、昨日だってあんなに仲良くしてたじゃない」 ここまでくると朝倉は笑顔を崩し、ハルヒを睨みつけるような表情で言った。 朝倉「そうよ。私だって彼の気持ちは私にあるんだって思ってた・・・ 昨日はね、彼、私にシルバーアクセサリーについて詳しく聞いてきたのよ。 私、よくショップを回ったり、時には自作したりもしてるからね。人並み以上には 詳しいと自負してるわ」 ハルヒ「・・・あ!?」 朝倉「心当たりがあるようね。彼にねだったことでもあるの?・・・その通りよ。 彼は今日のあなたの誕生日のために、わざわざこの私に教えを受けてたってわけ。 バカにしてると思わない?」 ハルヒはそれを聞くと、自分の勘違いを深く恥じた。 ハルヒ(キョン・・・まさか私のために、そこまで考えてくれていたなんて・・・) 朝倉「彼に告白を断られた後、そのことを聞き出したわ。まったくピエロもいいとこよ」 そういうと、朝倉はハルヒに近づいてきて、ハルヒの頬を張りつけた。 朝倉「おめでとう!これで彼はあなたのものよ!お幸せにね!」 そこまで言うと、朝倉は走ってその場を去った。 ハルヒは唖然とした顔で、走り去る朝倉の後ろ姿を見つめていた。 朝倉「なによ、人をバカにして!別に本気だったわけじゃないけど ヘンに気を持たせるような素振りを見せなくてもいいじゃない」 朝倉がマンションの下までくると、そこには長門が立っていた。 長門「・・・これ」 長門が缶ジュースを差し出すと、朝倉はひったくるようにして 手に取り、一気に飲み干した。 長門「・・・あなたは、彼のことが」 朝倉「言っとくけどね。私は涼宮さんが憎かっただけなの。 キョン君のことなんて本気じゃなかったわ。彼が私になびいたら、 さっさとフッてやるつもりだったの」 長門「あなたは素直じゃない。でも、以前よりは本音を言ってくれるようになった」 そういうと、長門はゆっくりとハンカチを差し出した。 朝倉「なによ・・・みんなでバカにして・・・ホント、私だけバカみたいじゃない・・・」 その夜、朝倉と長門はマンションの屋上に上がり、街の光を眺めていた。 朝倉「今頃、あの二人仲良くやってるだろなあ・・・ あーあ、こんなことになるんだったら最初から正攻法で攻めるんだった」 長門「私は、あなたがうらやましい」 朝倉「こんなヘソ曲がりで陰険な私が?えらく持ち上げてくれるわね」 長門「あなたは人を惹きつける明るさを持っている。彼だってあなたの明るさには惹かれてた。 ただ、あなたは素直じゃないだけ」 朝倉「あなただって、私の本性は知っているでしょう?明るさなんて表面上だけのものよ」 長門「表面上だけでも、それは立派なあなたの個性。私にはそれがない」 朝倉「言ってくれるわね。私だって、あなたのその素直な性格がうらやましいわ」 長門「そう」 朝倉「そうよ。素直さにかけては、私やあの涼宮さんなんて足元にも及ばないわ」 長門「・・・そう」 朝倉「そんなにうれしそうな顔しないでよ」 その後、朝倉とハルヒはよくケンカするようになった。 しかしそれは以前のような水面下だけのものではなく、 お互い本人を前にしての口ゲンカである。 似たもの同士、少しは互いを理解できたというべきか。 朝倉も少しずつではあるが本心を明かすようになり、 以前とのギャップに篭絡されたヤツは男女問わず多いようだ。 次学期の委員長にはハルヒも立候補するつもりのようだが、 人望の面で圧倒的に不利である。 その差をどう埋めるつもりなのか、少し気になる。 まあどちらが勝っても対した問題ではない。 願わくば、この友情が末永く続きますように。 終わり。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3463.html
俺が北高に入って早2年と5ヶ月、もう高校3年の秋だ。 この坂道もあと半年ほど登ればサヨナラ、何だか秋風のせいか寂しい気分になる。 教室に入ると、すでに受験色。皆、色んな情報を交換し合っている。 勿論俺も母親の期待に応えるべく大学進学を考えている。 まぁ、そうは言っても谷口と競い合った低空飛行のお陰で推薦入試なぞ、今の俺には無縁の話だ。 ハルヒはああ見えて、勉強は出来るゆえに既に六甲大学への推薦を受けている。 一般入試の受験先を考えていると、ハルヒがやってきた。 3年になってからもこいつとは同じクラス、まさかこいつが俺と同じクラスを願ったなんて事は無かろう。 国木田は3年から理系コースへ、谷口も何を思ったか理系に行った。 「キョン、あんた大学はどうすんの?まさか行けないって事はないでしょうね?」 なんだ、藪から棒に。その「行けない」って言い方は癪に障る。 人に進学の事を聞くときは「行くの?行かないの?」でしょうが、やれやれ本当に毎度疲れさせやがる。 「ねぇ、キョン、聞いてる?」 ああ、聞いているとも。勿論俺も進学は考えている。将来はだな、ほら公務員にでもなるか、 あわよくばどこかの上場会社にでも入れればと考えている。 「はぁ?あんたね、そんな人生でいいの?ちっとも楽しくないじゃない。もっと面白い事考えた方がいいわよ。」 俺の人生が面白くなろうがならまいが、お前さんに何の関係があるというのだ。 「SOS団から就職組や浪人は出さないから。団長命令として六甲大学に合格しなさい、わかった?」 おいおい、そんな無理を言うなよ。先日の模擬試験の結果で偏差値が50しかないんだぜ。 どう頑張ったところで、65以上の六甲大学なんか受かるわけが無かろう。 天変地異でも起こらなければありえない話だ。 今のレベルで合格出来そうな大学といえば、船で目下に広がる海を越えた阿波大学か背後に迫る山を5つほど越えた日本海大学ぐらいだな。 しかし、下宿となると親にも負担が掛かる、あと少し頑張って甲陽園大学ぐらいには行きたいものだ。 そんな事を考えているうちに、担任がHRにやってきた。 大学進学の基準にもう一つ気になることがある。 SOS団の団員はそれぞれどこに行くかだ。 古泉は近畿外大を目指すと言っていた。 長門はやはり観察対象が行く大学、六甲大に入るらしい。 まぁ、長門の場合、どこでも希望すれば入れるんだろう。 一学年上の鶴屋さんも六甲大、やはり地元ではセオリー通りの進学コースなんだろうな。 それはそうと今、同じクラスに朝比奈さんがいる。 この朝比奈さんは朝比奈さん(大)でもなければ、朝比奈さん(小)でもない。 朝比奈さん(妹)である。 まぁ、同級なので敬称略でいいのだが、長年呼んだ「朝比奈さん」が抜けない。 朝比奈さんが卒業と同時に、海外の大学へ行き、代わりに朝比奈(妹)が転校してきた。 まぁ、俺は驚かなかったが、ハルヒは鳩が豆鉄砲食らったかのように驚いていた。 もちろん、SOS団に連れ込まれたのは言うまでも無い。 ただこの朝比奈さんはどの時間から来たのか、俺たちと過ごした2年間の記憶は無い。 中身は変わらないのだが。 そして今、俺が一番注目しているのが朝比奈(妹)、ああ、もう面倒だ朝比奈さんで統一。 朝比奈さんが、どこの大学に行くのかそれが一番気になっている。 授業も終わり、いつものように部室へ向かう。 下級生の団員がちらほら、まぁこいつたちの話はまた今度にしよう。 朝比奈さんは先に来て、部室の掃除をしている。 長門は2年以上居座った同じ場所で本を読んでいる。 俺は朝比奈さんがお茶を淹れて、テーブルまで運んできたときに聞いてみた。 「朝比奈さんは進学はどうするんですか?行くの?行かないの?」これが正しい質問の仕方だ。 「えっとですね、ふふ、禁則事項です。」 え?俺は口に含んだお茶を食道ではなく気管に流し込みかけた。 「冗談です。六甲大学を受けようかと思っています。」 それってやっぱ上からの命令?俺は廻りに聞こえないように聞いてみた」 「それは本当に禁則事項なの。」 そうか、みんな六甲大目指すのか。 この朝比奈さん、my sweet angelと逢えるのも半年か・・・l 少しまどろっこしい悩みをしていると、いつものようにハルヒがドアを開けて入ってきた。 団長席に座るや否や、俺に向かって言い放った。 「いい、今日からSOS団は特別戦闘体制に入るから。目指せ六甲大よ!」 はぁ?なんだそれは?俺に構うな、今から頑張っても六甲大は到底無理だ。 「あのねキョン!やらずにウダウダ言っても仕方ないの。あんたは六甲大に行かなくちゃならないの!」 何ゆえに?何ゆえに俺が六甲大を目指さなければならんのだ。 そりゃ確かに女子にもモテるし、就職も良いかもしれん。だがなハルヒ、人間には身分相応って言葉がある。 背伸びしても届かないものは届かないんだぜ。 「キョン、あんた本当にそれでいいの?みんな六甲大行くのにあんただけ片田舎の三流大で満足なの?」 勝手に三流大に決めないでくれ。 「それにね、あんたが六甲大に来なければSOS団が作れないじゃないの!」 what?大学でSOS団だと。何を言ってるんだ、こいつは。 大学に行ってまでお前と馬鹿やりたくねぇよ。大学に入ったらな、遊びサークルでも入って、夏は海、冬はスキーでも行って 学園祭は出店でもやってだな・・・・・あれ?なんだ?今と変わらないな。 「つべこべ言わず六甲大にあんたが受かる学力が付くまで、毎日ここで補講するから、わかった?」 「それから下級生は今日からキョンが六甲大に受かるまでコンピ研の部室を占拠すると良いわ。じゃ、今から開始!」 ハルヒの号令とともに下級生はコンピ研の部室へと移動した。 それから毎日、俺はハルヒとの受験勉強が始まった。 11月の終わりにはハルヒと長門、朝比奈さんまでもが推薦入試で六甲大に合格した。 初雪が降る頃、全国模試で俺の偏差値は60ぐらいまで上昇していた。 もう少しか・・・大森電気店で貰った電気ストーブが今日も悴んだ手を緩めてくれる。 入試過去問題を解き終え、ハルヒがそれを採点してくれる。 そして、俺を見つめて嬉しそうに 「キョン、この点数なら去年の合格点よ。あと少し頑張れば確実に六甲大にいけるわよ」 それから、来週から冬休みになるから、部室はやめて自宅で勉強ね。 キョンの家は妹さんが居て気が散るから、学校が始まるまで私の家でやるから、毎日9時にくる事。」 ハルヒは嬉しそうに解答用紙を俺に付き返した。 終業式も無事終わり、明日からハルヒの家で朝から猛勉強か・・・ そういえば、俺はハルヒの家に行ったことが無い、どこにあるんだ? 「あんた来た事無かったっけ?あのね・・・」 ハルヒは丁寧に地図を書いてくれた。 翌朝、吐息も凍るような寒さの中、俺は参考書をカバンいっぱいに詰め込み、家を後にする。 歩いて30分、ハルヒの家に到着。 奇抜な家を想像したが、どこの町にもある普通の家であった。 しかし、何か嫌な予感がする。 一呼吸おいて、呼び鈴を押す。直ぐに勢い良くドアが開く。 「さぁ、上がって。あんたの為に特別に部屋を用意してあるから」 ハルヒは嬉しそうに俺を家に招きいれた。 通された部屋は机以外何も無い。時計すらない。カーテンは閉じられ、いや、きっとその窓の向こうの雨戸も閉まっているのではないか? 電気を点けなければきっと真っ暗なはず。 「いい、キョン。今日から2週間ここで頑張るのよ。それとあなたの行動は全て私の管理下に置かれているから勝手に人の家をウロウロしない事。トイレも許可を受けてからね。あと、携帯は没収。」 おい、俺は刑務所に入った覚えは無いぞ。それに時計すら無いとはどういう事だ? 「時計が有ったら、昼飯とかお茶とか言い出すでしょ!だから無くしたの。私の時間配分どおりやれば良いから。」 予感は的中した。が、この怪力女から逃げられない事は既に学習済み。俺は嫌々ながらもこの状況を受け入れざるを得なかった。 ハルヒの言うままに、問題を解いたり、解法を聞いたり。 何時間ぐらい経ったのだろうか、時間概念を消されたこの部屋では己の腹具合だけで全てをさとらなければならない。 ハルヒが一旦、部屋から出て行った。 問題を黙々と解く俺。ふとペンを止め、考え込んだ。 俺はこれで良いのか? ハルヒに半強制的に針路を決められている。 もしかすると、他の大学に行くと俺の人生の伴侶が居るかもしれないというのに。 大学に入って、就職までハルヒに言われるがまま・・・ まてまて、そんな事は絶対にありえん。 俺の自由意志はどこに行った?俺は一体何者なんだ?いや、者ではなく物なのか? 段々と自閉的な思考の渦にはまっていったその瞬間、ドアが開いた。 ドアから顔だけ覗かせたハルヒは 「キョン、その問題が解けたら休憩にしましょう。」と。 おお、昼飯か。腹も減ってきていた、腹時計は正確だった。 「今日はオムライスね」 何度かハルヒの作った飯を食ったことがあるが、こいつの飯は美味い。そこらの定食屋顔負けの美味さである。 問題を解き終え、テーブルを片付ける。ハルヒがトレーを持って再び入ってきた。 余程腹が減っていたのであろう、特盛サイズのオムライスを余すことなく食べきった。 いつもならココから気だるい気分で、昼寝をする訳だが、今はそうもいかない。 何せ目の前にハルヒが居るわけで・・・ 「キョン、ご飯が済んだら少し休憩して続きを始めるわよ」 また囚人の始まりだ。 そう考えると同時に問題が配られる。それをまた黙々と解く。 人間の思考というのは不思議なもので、必死に問題を考えているにも拘らず、瞬間的に他の事を考えたりする。 そういえば、さっきからハルヒ以外の声や足音が聞こえない。親は居ないのか? しかし、この事を尋ねたら、きっとハルヒは集中力が足りないと俺を批難するだろう。 俺は再び、問題に集中した。 途中、一度だけトイレに経ったが、トイレは部屋の前にあり、窓は暗幕で閉ざされていた。 「開けるな」 ご丁寧にも俺に太陽を拝ませないつもりの様だ。 廊下もこの場所からは日は差さない。 淡い黄色を発色する電灯だけが俺の存在を明らかにしている。 そして廊下には俺を閉ざしたかのように椅子が置かれている。 単調ながらも次から次へと襲い掛かる英単語や数式、年号をバッサバッさと切り倒し LVが上がる音が聞こえそうなぐらい俺は打ち込んだ。 さて、今何時だ? 昼飯で満たされた腹はまだ空いていない。 夕食は家で食べられるんだろうな。このまま監禁なんてまっぴら御免だぜ。 そんなことを考えたのがいけなかったのか、ハルヒが俺に問いかける。 「晩御飯はパスタでいい?」 本当は別のことを言いたかったのだが、何故か二つ返事してしまった。 そして昼飯と同じくハルヒが大盛パスタを運んできた。 ハルヒも一緒に食事を取るのだが、今日は物静かだ。何も語らない。 こうもハルヒが静かだと気味が悪い。 「何?足りない?おいしくない?」 いやいや、このパスタは絶品だ、俺は久しくこんなパスタを食った覚えが無いとゴマをする訳ではないが、本音じみた事をこれ以上は無理というぐらいの笑顔で答える。 「あっそ、ならもっと美味しそうに食べなさいよ」少し不機嫌なハルヒ。覚られたのか? 俺がパスタを平らげて少し安穏とした時を過ごしていると、遠くでチャイムが聞こえる。 ハルヒは直ぐに部屋を飛び出して行った。 親でも帰ってきたか? 数分後、俺はドアから入ってくる奴に驚愕する。 いや、人に驚愕したのではなく、俺が置かれた状況に驚愕したのだった。 「どうも、元気そうで何よりです」、ドアの向こうになんと、古泉が居た。 古泉は大きなバッグを二つ携え、部屋に入ってきた。 「涼宮さんに頼まれて、あなたの家まで行ってたのですよ。」 何をだ?何しに俺の家に行ったんだ?俺の家が神人にでも潰されそうになったか? 「いえいえ、実はこれあなたの荷物です。お母様に頼んで着替え用意してもらいました。」 おい、なんで着替えがカバン二つも必要とする? 「さぁ、それは涼宮さんに聞いていただかないと何とも・・・・」 目を細め、溢れんばかりの笑顔で古泉は答えた。 そして、コーヒーカップを3つトレーに乗せたハルヒが入ってくる。 「古泉君にキョンの家から着替え貰ってきた。とりあえず1週間分ぐらい。お正月は帰ってもいいから」 なんですと?何故俺は今日からお前ん家に泊まらねばならんのだ?答えろハルヒ。 「行き帰りの時間が無駄でしょ。往復で1時間、そんな時間が有れば問題10問はこなせるわ。 だから今日からキョンはここで勉強よ」 おいおい、これって軟禁だよな?古泉、俺の人権はどこに隠した? 「あなたには是非、六甲大に行って貰わなければならないのです。分るでしょう?」 何故だ? 「決まってるじゃない、SOS団の為よ!」とコーヒーを啜りながらハルヒが横槍を入れる。 すかさず古泉が「まぁ、そういうことですね、あなた自身が一番分っている事です。」 ハルヒの機嫌を損ねないためにも俺は六甲大へ行かなければならなくなった。 色調の存在する閉鎖空間で俺は問題と格闘している。 一体、今が何日の何時か分からない。 多分、6日目のはず。 何故多分とかといえば、俺が5回眠ったからである。 太陽が恋しくて堪らない。 しかし、ここから出てゆくことは許されない。 脳のバックグラウンドでそんな事を考えつつ、問題を解く。 ハルヒが切り出した。 「キョン、模擬試験するわよ。いっとくけど、模擬だけど実戦だとおもってやるのよ。」 今からかよ!飯はどうした?お茶は出ないのか? ここに軟禁されてから俺の楽しみはそれしかない。 「試験が終わったら食べさせるわよ。だから頑張って。」 そうハルヒは俺を見据えて呟いた。 「いい、今から60分づつ3教科のテストよ。休憩は15分づつ。もし、これで合格点を取れなかったら 後半の合宿はもっと厳しくするから」 おい、今でも充分なぐらい厳しいと思うんだが? 「じゃ、はじめるわよ」 そういって、ハルヒは俺に問題と解答用紙を配った。 「時間は60分、30分過ぎて出来たら休憩してもいいわ。名前は必ず書く事。じゃ、国語からはじめ!」 ハルヒの声と同時に俺は鉛筆を走らせる。 お、この問題は前にやったことがある。あ、これもだ・・・・。案外、記憶に残っているもんだな。 次から次へと問題を解いてゆく、まだどこも躓いていない。 最後の漢文問題で一瞬筆が止まったが、解答用紙を見るとペンが動き出す。 なんだこれは?この鉛筆はホーミングモードにでもなっているのか? そして問題を全て解き終えた。 顔を上げるとハルヒがこっちを見ている。 「あんた、カンニングしていないでしょうね?」 へへ、ハルヒにしては面白い冗談だ。俺とお前以外に誰がここに居るというのだ。 「じゃ、解けたんで休憩するわ」という俺にハルヒはこういった。 「あんた、確認し直しなさいよ、それにまだ20分しか経ってないから。」 なんですと?まだ20分・・・・信じられん、いつ俺に時間を止める能力がついたんだ。 仕方が無い、見直すか。 もう一度、問題を解く。間違いない。これはもしかすると満点じゃないか? ハルヒ、この調子なら一気に出来そうだ、あとの2教科を直ぐに配ってくれ。 やる気が出た俺をもう誰も止められやしない。 なんだこのやる気は。 今まで感じたことの無いやる気だな。 そうして俺は残り2教科を解き始める。 うーん、自画自賛ではないが俺の学力は飛躍的に伸びているのかも知れん。 問題を解き終え、ハルヒに渡す。 ハルヒは直ぐに採点に入る。 少しの間の沈黙、赤ペンを走らせるキュキュという小刻みな音だけが響く。 そして、顔を上げたハルヒが俺に言った。 「やっぱ教える人間が良いとこうまで変わるものね。キョン、3教科で288点、合格よ!」 おお、やった! ん?俺は喜んでいる。たぶん心の底から喜んでいる。 何故だ?合格すればハルヒとまた4年間一緒なんだぞ。 いいのか俺?本当にいいのか? 得体の知れぬ葛藤が続く・・・・ 「キョン、カーテン開けてもいいわよ。それから雨戸も。」 言われるまま俺は窓を開け、外の景色を楽しんだ。 綺麗な夕焼けが見える。 「キョン、晩御飯は外で食べましょう。今日はSOS団全員集まる事になっているから」 ほー、早速俺の合格祝いか、いいねー 「ここまでみんなの協力があったからこの点数なのよ、あんたが全部出しなさいよ!」 なんだと?俺は懲役を喰らった上に罰金まで払わされるのか! なんだかなぁ・・・・ 「さ、いきましょう!」ハルヒは席を立った。 いつもの駅前に到着すると、長門、朝比奈さん、古泉が居た。 「みんな、今日はキョンのおごりだからしっかり食べなさいよ」 ハルヒは駅前のすし屋に入る。 おい、ここの寿司は廻ってないぞ!こんな所で俺が全額とか無理だろ! すると古泉が俺に耳打ちした。 「心配しないで下さい。ここも我々の管轄内なので大丈夫です。」 そうなのか?それを聞いて俺はほっとした。 「それにここ数日間、あなたが涼宮さんと一緒にいる間、閉鎖空間は一切発生しませんでした。 組織も今回の事を非常に評価しています。なので、もしあなたが白紙で答案用紙を出しても 六甲大には合格できると思いますよ。ま、その必要もなくなりましたが・・・・」 結局俺は人類のためにペンを持っていたわけか。ペンは剣より強し、誰かが歌ってたな。 そして、俺達は腹いっぱいの寿司を頬張った。 店を出てから古泉が切り出した。 「私と長門さんは少し話がありますので、ここで失礼します。」 朝比奈さんも今日は他の用があるらしい。 「じゃ、ここで解散ね。明日は大晦日なんで23時に集合よ!初詣に行くから。」とハルヒ。 今日は30日か・・・・やっと時間が戻ってきたぜ みんな頷き、笑顔で別れる。 俺とハルヒは寒空の下を並んで歩いた。 「ねぇ、キョン。やれば出来るって分かった?」 ああ、俺は超人だからな 「あんたね、そんな風に思っていると足元掬われるわよ」 冗談だ。でもハルヒ、ありがとうな。 「はぁ?何言ってんの!私は団のためにやっただけだから!」 そういうハルヒの頬は少し赤く染まっていた。ような気がした。 「ねぇキョン、六甲大に合格できそうで嬉しい?」 え?そりゃまぁ良い大学に行けるってのは嬉しいさ。 「六甲大に行ける事が嬉しいの?それとも私と同じ大学に行ける事が・・・・」 ん?なんだって?聞こえないぞ? 「聞こえてるのに聞こえないふりするなんて卑怯よ!」 そう言いながらハルヒは俺を肘でつっつく。 いつもなら俺の息が止まるほどの強さなのだが・・・ 「ああ、お前と一緒にまた4年間居られると思うだけで俺は嬉しいぜ」 その一言を言い終えたとき、ハルヒの頬を小さな星の欠片が伝い流れたように見えた。 「キョン、本当に頑張ったね。良かった。」 ありがとう、お前のお陰だ 「まだ、合格したわけじゃないんだから。気を抜かず頑張るのよ」ハルヒは反対を向いて呟く。 ああ、分かっているさ。 「ねぇ、キョン、これ合格のお守り」 そういうとハルヒは俺に抱きつき背伸びをした・・・・ 閉鎖空間から開放されるときのスイッチはいつもこれだ・・・・ 空にはいつもより多目の星が輝いていた。 涼宮ハルヒの補習 おわり
https://w.atwiki.jp/prdj/pages/1460.html
カッパ Kappa この人型の亀は水の近くでしゃがみ込み、怪しい目をしている。頭の上の皿の形は水で満たされている。 カッパ CR2 Kappa XP 600 混沌にして中立/小型サイズの人型怪物(水棲) イニシアチブ +3;感覚 暗視60フィート;〈知覚〉+2 防御 AC 15、接触14、立ちすくみ12(+1外皮、+1サイズ、+3【敏】) HP 19(3d10+3) 頑健 +4、反応 +6、意志 +5 抵抗 [強酸]5、[氷雪]5 弱点 頭の皿 攻撃 移動速度 20フィート、水泳40フィート 近接 爪(×2)=+5(1d3+1、加えて“つかみ”) 特殊攻撃 つかみ(中型)、引っかき(爪(×2)=+5、1d3+1) 一般データ 【筋】12、【敏】17、【耐】13、【知】8、【判】15、【魅】10 基本攻撃 +3;CMB +3(組みつき+7);CMD 16 特技 《頑健無比》、《素早い移動》 技能 〈真意看破〉+5、〈水泳〉+9、〈脱出術〉+10、〈治療〉+5;種族修正 +4〈脱出術〉 言語 共通語、水界語 その他の特殊能力 水陸両生 生態 出現環境 気候問わず/湖または河川 編成 単体、2体、または集団(3~6) 宝物 標準 特殊能力 頭の皿(超常)/Head Bowl カッパの頭の上にある受け皿には故郷の川あるいは湖の水が入っている。カッパが敢えて頭部を傾けるかカッパを押さえ込んでいるクリーチャーがそれを強要しない限り(押さえ込んでいる間に組みつき判定が要求される)、その水はなくならない。水がなくなると、カッパは移動不能になりよろめき状態になる。カッパは依然としてアクションをとれるが、自力でその位置から動くことはできない。空っぽになった頭の皿に水が満たされると、カッパは即座に状態が回復する。その代わりの水はカッパの故郷のものである必要はないが、カッパは機会があればまず頭の皿をそこの水で満たす。 カッパは人型の亀に似た奇妙な両生類である。それは新鮮な水に棲み、湖に流れる水流や川、あるいは池を好む。カッパは背中に背負った小さな甲羅、無愛想な顔、そして先端に爪を生やした水かきのついた手足を持っている。カッパは概して緑色をしているが、その肌の色調は緑や芥子色に変化する。クリーチャーには頭の上に浅い皿があり、このクリーチャーはそれに常に故郷の水を入れている。 カッパは腕白で、故郷の近くを通るあるいはそこで泳ぐものにイタズラをすることがある。カッパのイタズラはローブの下を覗き見る、手拭いを盗む、あるいは水中の捕食者のふりをするといった通常無害で迷惑なものだ。カッパはまた強力な敵に自身の取っ組み能力を甘く見積もってもらおうと、相撲を挑むことがある。怒ったカッパは危険になれ、故郷の水に入っている乗騎、動物の相棒、あるいは人々さえ溺れさせようとする。最も退化したカッパは入浴した者を溺れさせ喰らうことで知られている。 カッパを知る賢者たちはこのクリーチャーにはいくつか弱点があることを知っている。まず何よりも、カッパはキュウリと馬肉を愛する。そうした供物を並べれば、カッパは侵入者を悩ませようとはせず、そして彼らの申し出を受けることさえあるかもしれない。更に、イタズラに対する強い好みを別にすると、カッパは礼儀正しい訪問者に対しては常に誠実である。戦闘でなく口頭による非難に直面したカッパは素早くそして恥ずかしがりながらイタズラを謝罪し、許しを請う。 頭の皿が空になった場合、カッパは通常蹲り助けを求め、戦闘を続けるのはそれを強要された場合のみである。こぼしたカッパの頭の皿を満たした相手はカッパの最高の感謝を受ける。最も賢明で賢いカッパのみが故郷を離れて旅せざるを得なくなっている時に水のビンを持ち運ぶ――大抵のカッパはそんなことは考えもしない。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/521.html
身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ 谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか? 所変わって一年五組 人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ 俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ 不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている 俺としてはポニーテール萌えなんだがな 「あたしも扇いでよ」 俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな 「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」 「ふん」 また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている 担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる 大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った 眼を覚ませば夕方だった 服が汗を吸って濡れている まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな? 「…………」 誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする 「やっと起きたのね」 思わずゾっとしたね 感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な 声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい 涼宮ハルヒ 我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる 感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ 「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」 静かに言いはなつ うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは 「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」 無言で脛に蹴りを入れられた お前、それは反則だろう 「………!」 抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな? まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた 抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる 「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」 教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる ―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は 「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」 そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ 「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」 何でだ 「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」 そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ で、何で原因が俺にあるんだ 「心当たりは無いんですか?」 全くな 「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」 乙女心って何の話だ 「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」 何故俺が謝るんだ むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが 「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」 実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな 「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」 含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い 「そうですね、例えば………」 どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は 「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ 発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」 いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね 俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある 背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視 でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ 誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな 教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。 まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた 校門まで走ってようやく気付いたよ 俺はハルヒの家を知らないってことにな こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!! ………焦っているな。かなり焦っている 冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか! 「涼宮さんの家ならあちらですよ」 「………いつから其処にいた」 「そんな事気にしてて良いんですか? 早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、 ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」 またこのパターンか と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……? 走る、走る、走る 廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!! ………うん、暑いね 思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た 体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない 「おいっ!」 叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは 「!?………な、何よ」 何ってそりゃあ…………うん、何だろうね とりあえず謝れといわれたが………… プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな 「………スマン」 とりあえず深々と頭を下げた 黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ 呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる あぁ、コレで良かったんだよな とまぁ、今後の心配が一つ無くなった 「はいっ!活動をサボった罰ね!」 途端にコレは無いだろう ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな 「………なんだ、コレは」 「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」 マジか 「大マジ」 …………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は 「いやぁ、お疲れ様です」 ▼ニヤケ面が現れた!▼ →殴る 蹴る 暴行 うほっ ………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない 「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」 それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか? 「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」 そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない 「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」 言われなくともさ 俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな………… まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ …………なんてな すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか 目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな どうやら私服に着替えたらしいその人物……… 「………ハルヒ?」 そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな 「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」 「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」 「そ、それもそうよね…………」 何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか 「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」 いや、何もきいて無いですけど 「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」 それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。 「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」 ご理解いただけて光栄ですな 「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」 妹よ、いつの間に出てきた ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが……… 「キョン………」 何だ 「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」 「……何でこうなってんの?」 「さぁな」 今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ 「さ、どうぞ~粗茶ですが~」 あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも 帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である う~ん、詩人だねぇ ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か 「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」 感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺 「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」 い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが 唐突に、雷が鳴った 「……嘘」 ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう 先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる 多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ 「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」 「え、」 何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か 所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ? ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った 液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな 「………古泉」 『はい、何でしょう』 「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」 『いえ、寧ろその逆……でしょうか』 逆? 『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』 大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが 『………ホンット鈍感ですね。貴方は』 知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ 『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』 最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな 風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた 「天空×字拳!!!」 ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ 「………」 背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが………… 「ねぇ、キョン………」 扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな 「笑ったら死刑だからね」 そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか 解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ ハルヒがメイド服を着ていた き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……… 「…………」 「…………」 両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか? その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった 「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」 剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は 「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」 ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな 「で、何か用か」 「…………!」 おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか? 「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」 そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも ピシャァンといった感じに、雷が鳴った 「!」 「うおっ!?」 いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね ハルヒが、俺に抱きついていた 「げふぅ!?」 この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。 いや、抱きつきなんだけどな 握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い 「………ハル、ヒ?」 自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな それはさておき………どうするかねこの状況 「………悪かったわ」 ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン 「………雷、怖いのか?」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺 「…………悪い?」 怖いんですが、ハルヒさん なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略) それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ ………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな 「まぁ、落ち着け、ハルヒ」 と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない 「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」 ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ いや、駄目だよな聞き流してちゃ しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ 「まぁ、いいわ………」 ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!! ・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ しかし世の中そんな訳にも行かないんだな 「その代わり………一緒に寝なさい!」 「はぁ?」 いつもの如く、ビシィっと指を刺す 「団長を守るのは団員の役目でしょ!」 いやぁ、それも初耳だわ てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね? もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか? 今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな などと一般論を組み立ててみた物の ………正直、たまりません まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ 添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな 雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない ………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい 落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない 生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い 谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが 「…う……うぅ………」 ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる 其処まで怖いのか、雷が 「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」 言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな 年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ 「…………ずるい」 ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr ゴンッ ………ほらな 「ずるい!不公平よ!」 ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな で、何が不公平なんだ 「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」 泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ 考えている?ハルヒが?俺の事を? 「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」 ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる ―――ああ、そういうことか これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな 「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」 声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる 俺は、ハルヒを抱きしめた 「!?」 「…………平気な訳、無いだろ」 聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな 「俺だって、ハルヒが好きだ」 我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ 俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。 ……………妙に沈黙が怖い しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる 俺の唇に、ハルヒの唇が重なった 「……ん…………」 ハルヒの口から小さく声が漏れる 唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった 唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する それでも照れ隠しにと、俺は声を発する 「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」 ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ 案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく…… それも何処か嬉しそうな声で答えた 「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」 そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる 緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分 その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ 精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した 「………オヤスミ」 俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた 「ってきまーす」 そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている 回りくどく言ったが兎に角暑い 早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ 「キョーンッ!」 制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな 因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは 「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」 視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ? とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな――― end
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1915.html
涼宮ハルヒ無題1 涼宮ハルヒ無題1 2話
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/63.html
涼宮ハルヒの退屈(2006年放送版第04話、構成第07話・DVD版第08話/2009年放送版・時系列第07話) スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍 演出:吉岡忍 作画監督:池田和美、荒谷朋恵 原作収録巻 第3巻:短編集『涼宮ハルヒの退屈』より短編『涼宮ハルヒの退屈』。計61ページ分をアニメ化。一部改変。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第4巻』に収録。 紹介 放送順では古泉初登場。 突飛な展開だが、キョン以外のSOS団員が普通じゃないことを分かっていれば楽しめる。 その一方、キャラ設定が説明されないまま進行するため、放送当時は「意味不明」と言われアンチのネタになることが多かった。 時系列順では「憂鬱」直後の話。ハルヒの性格もあまり変わっていないことがわかる。 2009年版の放送では次回は『笹の葉ラプソディ』。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『チアねこマン』。(DVD第03巻に収録) 2009年版の放送ではこの回から提供バック中にサントラの『ハルヒの告白』が流れる様になる。 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第4巻に収録): ハルヒ「次回!『涼宮ハルヒの憂鬱』、第3話!」 キョン「チッガーウ!! 次回、『涼宮ハルヒの憂鬱』、第5話!『涼宮ハルヒの憂鬱 III』えーとつまり? これが前回の続き?……無駄にややこしいのだが……」 ※オフィシャルファンブック『涼宮ハルヒの公式』P.43から引用。 DVD版: 有希:次回、『ミステリックサイン』。ブーン。 放送版とDVD版との違い フリーザーの上に置いた急須が描き加えられている。 パロディ・小ネタ キョンが投手に代わり、投球するシーンからタッチっぽい曲がw→音楽の神前氏の仕業らしい。 どこぞの永世監督→長○監督。 マジックポイントを減らそうとしている。→ドラゴンクエスト。 長門が1回目のホームランをかっ飛ばす場面のキョンの『すごい飛んでる!』→杉田氏のアドリブ。 など多数。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 鶴屋さん:松岡由貴 谷口:白石稔 国木田:松元恵 キョンの妹:あおきさやか 野球部主将:石川大介 主審:柳沢栄治 キャッチャー(上ヶ原パイレーツ):大橋隆昌 バッター(上ヶ原パイレーツ):西本理一 キャプテン(上ヶ原パイレーツ):金子英彦 スタッフ 脚本:村元克彦 絵コンテ:吉岡忍 演出:吉岡忍 作画監督:池田和美、荒谷朋恵 動画検査:中野恵美 美術設定:田村せいき、平床美幸 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:高木理恵 制作マネージャー:八田真一郎 原画 牧田昌也 牟田亮平 高田謡子 河浪栄作 高橋真梨子 中野良一 吉岡忍 動画 古川かおり 井上真希 遠藤亜矢子 引山佳代 Ani Village 仕上げ 石原裕介 豊澤綾 胡恵美 佐々木祥子 田口真由美 Ani Village 背景 鵜ノ口穣二 細川直生 篠原睦雄 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年4月23日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年4月23日25時30分-26時00分 tvk:2006年4月24日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年4月24日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年4月24日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年4月25日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年4月25日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年4月26日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年4月26日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年4月29日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年4月29日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年5月14日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年5月14日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年5月14日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年5月15日26時30分-27時00分 tvk:2009年5月15日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年5月16日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年5月17日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年5月18日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年5月19日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年5月19日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年5月19日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年5月19日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年5月19日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年5月19日27時55分-28時25分 Youtube:2009年5月20日22時00分-2009年5月27日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年11月29日25時50分-26時20分 DVDチャプター アバン(0:00~1:21) Aパート開始(2:50~5:25)※題名無し練習開始!(5:26~7:28) 止めた方ががいい・・・(7:29~10:14) プレイボール!(10:15~11:31) Bパート(11:32~12:16)※題名無し穴だらけの守備(12:17~14:06) 謎のブロックサイン(14:07~16:34) コールド負けか?(16:35~18:18) 訝しがる上ヶ原パイレーツ(18:19~20:21) ゲームセット!(20:22~21:54) 今度はどっち?(21:55~22:20) 使用サントラ 0 00~0 33 SE 0 34~1 20『好調好調』サントラ03収録 1 21~2 50 OP 2 51~3 12 SE 3 13~5 25『ザ・強引』サントラ05収録 5 26~6 05 SE 6 06~6 46『特訓あるのみ』サントラ05収録 6 47~8 30 SE 8 31~10 14『何かがおかしい』サントラ02収録 10 15~10 35 SE 10 36~11 33『おいおい』サントラ02収録 11 34~12 17『やれやれおいおい』サントラ05収録 12 18~13 11 SE 13 12~14 58『激烈で華麗なる日々』サントラ05収録 14 59~15 23 SE 15 24~16 36『神人』サントラ04収録 16 37~17 23 SE 17 24~18 20『長門VS朝倉』サントラ03収録 18 21~19 10 SE 19 10~20 22『 野球は青春との接触』サントラ05収録 20 23~20 58 SE 20 59~21 54『いつもの風景』サントラ 02収録 21 55~22 06 SE 22 07~22 20『コミカルハッスル』サントラ06収録 22 21~23 25 ED 23 26~23 40『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3866.html
◆0 夢と希望に充ちあふれて始まったような気がしないでもない高校生活一か月目にして涼宮ハルヒと関わりを持ってしまってからというもの俺の人生はちょっとしたスペクタクルとでも言うべき出来事の連続ではあるが、しかし上には上が下には下がいる、と昔から言うように俺以上に意味のわからない存在に振り回されて恐ろしく充実した人生を送っているやつというのも世の中には確かに存在する。 今回はハルヒと俺と、そんな一人の男子生徒にまつわる、不幸とも幸福ともいえないような騒動の話だ。 ……え? 誰だ、だって? やれやれ、言わなくてもわかるだろう。 いつだって騒動のきっかけはハルヒであり、そしてハルヒに巻き込まれた俺以外の男子といえば、あいつしかいないじゃないか。いや、谷口ではない――古泉一樹。赤玉変態型超能力者、である。 ◆1 「キョンくん、ちょっとお願いされてほしいことがあるのね」 と、同じクラスの阪中が話しかけてきたのは、長い一日の授業が終わってさて団活へと赴くかなと俺が座りすぎで重たくなった腰を上げたころだった。ちなみにハルヒはホームルームが済んだ瞬間ロケットスタートでぶっ飛んでいってしまったので、後ろの席は空っぽである。 「ん、なんだ? ハルヒへの言付けとかだったら頼むから本人を探してくれ」 探すまでもなく部室にいると思うが、それはさておき、最近のハルヒはクラスの女子とよく話をしているようだし、出来ればこのまま普通にクラスに馴染んで普通の女子高生になってほしい……と俺は思うのだ。って、俺に何の権限があってあいつにそんなことを望むのか、という話だが。 「違うのね」 阪中はそう否定するとなんだか恥ずかしそうにもじもじと身をよじり、上目遣いで俺を見上げた。 なんだよ可愛いな~さすが某国木田の一押し……すまん、妄言だ。 「えっと、用があるのは涼宮さんじゃないのね……」 ごそごそとどこからともなくファンシーな色のものを取り出し、阪中は頬をさくらんぼ色に染めながら、 「これ……」 おいおい、マジか! 「えらくマジなのね! これ、古泉さんに渡してください!」 お願いなのねー(のねー)! とエコーを響かせつつ阪中はどこへともなく走っていき、俺の手の中にはご丁寧に赤いハートのシールが貼られた、どっから見てもラブレター然としたものが残された。 ……はは、お約束だな。 「――ちょっとキョン、今阪中さんに何かもらってなかったかい?」 「いやもらってたよな、それは俺が見るところずばりラブレターだろう!」 ……うるせー。 阪中の声の残響が消えたとたんに話しかけてきた国木田と谷口。お前ら目がギラギラしてるんだが。ああもらったとも、見ろ、この可愛い丸文字で書かれた宛名を。まだ本邦未公開の俺の名前だぞ。 「フルイズミカズキ……? あれ、お前そんな名前だっけ、忘れちまったよ。どのへんがキョン?」 はい、馬鹿ー。 「なんだ……そうだよね、まさか阪中さんに限ってキョンってことはないよね」 さりげなくものすごく失礼だぞ、国木田。残念ながら反論材料がないが。 「つーかまた古泉かよ。キョンもかわいそうになー、あんなのがそばにいたら余計モテなかろう」 お前今のボケだったのかよ! ボケで終わらせずにノリツッコミにまで昇華させてくれないとさっぱりだ。 「食いつくところそこかよ! 俺のことなんかほっといて話を進めろや!」 「よし。……で、なんだ、古泉は実はそんなにモテモテだったのか」 まああの胡散臭い整形疑惑さえ抱かせる顔だからな、わからないでもないでもない。ああ認めたくない。どうせ俺の知らんところで彼女の一人や二人や三人くらいは作っているのだろう。痴情のもつれから刺されちまえ。 すると谷口国木田両名はいかにもうんざりしましたーと言うように首を振り、 「かぁーっ、キョン、鈍いにもほどがあるぜ。あんなに露骨にモテてる奴があるか、忌々しい」 何? そうなのか? 「そうだよ。SOS団だって朝比奈さんとか、たまに見てもわかるくらいあからさまにアタックかけてるよ」 「そのうえ、それになびかない、と来たもんだ。あいつはホモか? Sランクだぞ?」 待て待て待て待て、待て! 朝比奈さんが、古泉に懸想しているだと? 有り得ない。ハルヒが恋をしたり俺が告白を受けるというくらいありえない。 国木田は哀れむような目つきで俺を見やると、「認めたくないのはわかるけどね……」と言った。 違う。断じてそうじゃない。認知するしないの問題ではないぞ。朝比奈さんが古泉に猛烈アタックって、いったいいつの話だ。映画撮影は随分昔に終わったし結局まだ続編は撮っていない。 「毎日お弁当作って九組にいったり、してるらしいけど」 有り得ない。それを俺が知らないなんていくらなんだって、さすがにおかしいじゃないか。俺の知る限り、未来人の朝比奈さんと超能力者の古泉は実はあまり仲がよくなかったはずじゃないのか? 俺は手にした阪中の手紙を見下ろした。俺の知らないところで、何か異常なことが起きている。 ◆2 古泉か朝比奈さん、あるいは第三者だが長門に話を聞く必要があったのだが――部室まで急行する途中で、俺はハルヒに引き止められた。正確には、部室のドアを目前にした廊下の真ん中で、であるが。 「何してんだ?」 「しっ、静かにしなさい」 ドアに張りついて片耳を押し当てながら、ハルヒはとんとんとドアを指差した。どうやら同じようにしてみろ、という意味のようだ。俺としては急いで三人のうち誰かに会いたいのだが、仕方がない―― 『あっ、朝比奈さん!? 何のおつもりですか!』 聞こえてきたのは、何やら切羽詰まった古泉の声だった。朝比奈さんもいるようだが、穏やかではない。 『うふ、お茶にちょっと仕込んじゃいました。古泉くんちっとも振り向いてくれないんだもの。流行りのヤンデレってやつですよ~』 『いや、僕はヤンデレとかキョンデレとか、そういうツンデレに似てるものはもううんざり……ではなくてですねっ』 それですよぅ、と朝比奈さんの可愛らしいはずの声。 『古泉くん、嫌じゃないんですか? あたしは嫌です、こんなに魅力的なのに、立場に縛られて独り身のままなんて』 『それはっ……あなたには、関係のないことですよ』 『そんなことありません。このまま何もしないで手に入る未来は、孤独なだけ……そんなのは嫌!』 『意味のわからないことを言わないでください! わかってるんですか、ご自分が何をしているのか』 『現場の独断で変革を強行しちゃっても、いいじゃないですかぁっ! 既成事実さえあれば、規定事項が……』 ――待て待て待て、こらハルヒ、目を輝かせてる場合かっ! 「そこの二人、ちょっと待ったぁ!」 「「きゃっ」」 ハルヒが張りついているのも無視して、ドアを蹴開ける。部室内では……朝比奈さんが、ウェイトレス姿だった。 「キョン! 何す……」 「ふぇえっ! ご、ごめんなさぁい」 「あっみくるちゃん! 待ちなさい、どこ行くのっ」 朝比奈さんは本物とは思えない勢いで部室を飛び出して行き、床に転んでいたハルヒはバネのように跳ね起きて朝比奈さんを追いかけてあっという間にいなくなった。 ……古泉、いつまでも床に寝ころんでる場合か。まさか、朝比奈さんに押し倒されたんじゃないだろうな。 「いえ、申し訳ないのですが、彼女にいただいたお茶が妙な味でして」 それはまさかあれか、痺れ薬というやつか! 朝比奈さんはそんなものをいったいどっから持ってきたのやら。 「長門さんに、あなたから頼んでいただきたいのですが」 ああ長門な、長門……ってうおっ! いたのか長門! 「……最初から」 助けてやれよ、もっと早く……いや悪い、今からでも遅くないからここに転がってるのを何とかしてくれ。長門はこくりと頷くと、いつもの本から離した手のひらをこちらへかざした。きゅるる、と呪文。 「……いやあ、あなたが来て下さって助かりましたよ……」 むくりと起き上がって古泉が情けない笑顔を浮かべた。もう少しで貞操を失うところでした、か。古泉、お前も普通に童貞だったのか……で、朝比奈さんか……いや、特に何も考えてないぞ。 「……これ、お前宛てに、阪中から預かってきたんだが」 俺はとりあえず持ったままであった手紙を古泉に突きつけてやった。別に怨念など込めていない。 「阪中さん、というと……」 三月に幽霊騒ぎを持ち込んできたあいつだよ。当然覚えてるよな? 向こうはラブレターまでよこしてるんだ。 「ラブレター」 古泉は溜息をつきつつ立ち上がると、机の上に置いてあった通学鞄の中からごっそり紙の束を取り出した。 「これは全て、本日いただいたものです。大半は朝下駄箱の中に入っていたんですが」 ばらばらと机の上一面に広げられた、手紙と思しきハガキ大のカラフルな物体たちに、阪中の手紙を加えて古泉は再び溜息をついた。谷口あたりが見たら何を贅沢に悩んでいるのかと思いそうだが、 「普段からもらうのか?」 「まさか……今日が初めてですよ。それをこんなに」 なるほど、やはり異常事態である。 「朝比奈さんがお前にお弁当を作ってくるそうだが」 「確かに今日はいらっしゃいましたが、それも今日が初めてです」 しかし国木田の話では、毎日猛烈なアタックということだったのだが……いったい何がこんなことに。 助けて長門さん。俺と古泉は揃って読書中の長門に目線をやった。長門は俺にまっすぐ顔を向け、 「朝比奈みくるがここへ戻るまであと五分三十二秒。退避を推奨」 俺がか。 「……違う。古泉一樹が」 だと思ったよ。 ◆3 「で、長門、説明してくれるか?」 校内のどこかで待機している、と言う古泉を早急に追い払い、俺は長門に向き直った。もう少しで朝比奈さん達が戻ってくると言ったが、どうやら長門は朝比奈さんとは逆に古泉を避けたいようだ。 「……説明する」 ありがとな。古泉には後から伝えられるかね。しかし待機って、いったい学校のどこに隠れるんだろうな。 「……古泉一樹には、現在、情報改変が施されている」 ――― 「情報改変……ですか」 はい、と彼女は微笑み頷いた。 僕が校内でのとりあえずの待機場所に選んだのは、生徒会室だった。ここなら涼宮さんには見つからず、その他の生徒も生徒会長が閉め出しているだろう、との判断であり、それは八割は正解だったのだが、しかし僕がすっかり忘れていたのは……相変わらず、生徒会には僕の計算外の人物がいる、ということであった。 「古泉さんの存在を認識した女性が、古泉さんに好意を持つよう設定されています」 生徒会書記にしてTFEI端末である喜緑江美里さんが、うっとりと僕の手を撫でながら言った。 非常に、なんというか、居心地が悪い。なんでこの人こんなにぴったりくっついて座ってくるんだ! 後頭部にヤンキー上がりのきっつい視線がザクザク刺さってるんですが。痛い痛い痛い。神人のパンチよりはマシながら、何かタバコを押しつけられてるようなジリジリした痛みが……。 「つまり、今なら古泉さんはあらゆる女性を――涼宮ハルヒさんを除きますが――落とし放題というわけです。誰でもおっけーですよ、長門さんでも、あの二人が結婚したらキョンキョンになってしまうお嬢さんでも頭部で昆布を養殖しているような奇怪な生き物でも、我々の認識上は女性ですから。まああのような髪の毛の妖怪を選ぶのはよほどの黒髪フェチさんだけでしょうけれど……ところで古泉さんは、髪の綺麗な女性はお好きですか? わかめは髪の毛に良いんですよ」 知ってますけど、わかめ……ていうか、なぜそのチョイス……すごい敵対心が感じられるんですが。 いや待て、そこじゃない。 「……今、涼宮さんを除く、とおっしゃいましたよね?」 「うーん、江美里とお付き合いしてくれたら、もっといろいろ教えちゃいますよ?」 痛っ! なんかあらゆる空気が痛い! 前門の虎後門の狼! 「……喜緑くん。今日はもう帰りたまえ。会長命令だ」 と、会長が言った。 「会長、それは権力の乱用です。不信任案出しますよ」 「我が生徒会にそのような規定はない。早く帰りたまえ」 そもそも、高校の生徒会長には、役員に命令する権限もないんだけどな……と思ったが、余計なことを言っても自分の首を締めるだけだと知っている賢い僕は黙っておいた。喜緑さんはふうと溜息をつき、 「仕方がありませんね、諦めましょう」 とあっさり手ぶらで部屋を出ていった。仕事とか、してたんじゃないのか……。 「古泉……俺が生徒会室でボヤ騒ぎを起こしたくなる前にそのアホ女の思いつきを解決しろよ……」 了解、しました、が……さて、どうしたら彼が僕の思い通りに動いてくれるだろうか。それと今から、部室に戻っても気まずくないだろうか……。はあ。 ――― で、結局、部室に古泉が戻ってきたころにはハルヒによって活動は解散となっており、朝比奈さんはハルヒに付き添われて先に帰っていた。長門も古泉が来る少し前に帰ってしまい、俺は一人であいつを待つ羽目になっていた、というわけなのだが。 「大体の事情は、ある方がご親切にも教えて下さったのですが……長門さんは、今後について何か言ってませんか」 なぜか、ご親切にも、を強調する古泉。よっぽど親切な人にあったのだろうか。事情を知ってる人って誰だ? 「長門は、こんなことが起こるに至った理由がわからなければ解決不可能だと言っていたが」 あいにく、長門にわからないことは俺にもわかりそうもない。何せハルヒの考えを当てようなんてな。 すると古泉は、ふっと呆れとウンザリが八割くらいのこちらが見ていてムカつく笑みを浮かべた。 「あなた方にもこれくらいはわかっていただけるかと期待していたのですが……相変わらず疎いんですね」 馬鹿にしてんのか。そうなんだな? 帰っていいか。 「聞いてください。僕が会う女子生徒すべてにアプローチを受けているのは涼宮さんが望んだからです。しかし涼宮さんは僕のためを思ってハーレムにしてくれようとしたわけではない。これはいいですね?」 そうだな、まあそうだろう。あのハルヒが他人中心の世界を作ろうと思うはずがない。 「では、何のために涼宮さんは世界を改変したのか――答えは簡単、要はあなたのためなのです」 俺かよ。お前は毎回毎回俺に責任をとらせて楽しいのか! 今回ばかりはさすがに心当たりがまったくないぞ。 「単純な話です……ライバルなんかいなければいい、自分以外が、あなたではない誰かを好きになればいい、と涼宮さんは考えたのでしょうね。あなたでなければ、別に誰でもよかったんじゃないですか」 毎回毎回、だから僕は宝くじが当たらないんですよ、と古泉が呟く。意味不明だ。 「つまり……どういうことだよ」 「心変わりしない、と涼宮さんに誓ってください」 いつ、どこで、なぜ、どうやって。 「明日にでも、ラブレターというのはいかがですか? 幸いここに見本が大量にありますし」 「悪趣味だぞ、古泉」 「失礼……わかっていただけた、ということでよろしいですか?」 いや、正直お前の論理の飛躍にはあまりついていけていない。そもそも俺の心の何がどう変わるのか。 「とにかく、時を見て、行動してください」 と、いつになく真剣な声音で古泉が言った。こいつも追いつめられるとグレる、というわけらしい、が……冗談でもなんでもなく、俺がどう行動したらお前がモテなくなるんだ? 続きはWebで!
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/868.html
昨日、俺のクラスは、月に1回の席替えをした。 そして、俺は窓際一番前という最悪なポジションを獲得してしまったわけだが、 じゃあ、ハルヒはその後ろか?と問うものもいるだろう。 しかし今回、ハルヒは俺と同じ列ではあるが、すぐ後ろではなく、窓際の一番後ろという前と変わらないポジションにいた。 ことの起こりは昨日のことだ。 母親は朝っぱらから親父とケンカしたらしく、親父が会社に行った後は俺にまでやつあたりしてきた。 しかも、俺はその日も妹にダイブをされたせいで腹が痛かったわけだ。ったく、朝から怒るなよ。 朝食はやけに焦げ臭かった。 しかも、朝のテレビ番組でやってた星座占いで俺の星座は12位。 そして極めつけの母親の言葉 「あんたも高校生なんだから彼女の一人ぐらい作りなさい!」 なんじゃそりゃ!俺だってできるもんならほしいさ。 気にしていることを言うな! その日の朝は、「いってきます」とも言わずに学校に向かった。 さらに学校につくと谷口が昨日のナンパは成功した!とか言ってきやがった。 そのときに谷口のチャックが開いてなかったのが、むしょうに腹立たしい。 さらにはチンプンカンプンな数学の授業で俺が指名され、素直に「分かりません」と言うと、「ちゃんと授業聞いてたのか?」とぬかしてきやがる。 さらには後ろの女も「何であれぐらいの問題も分からないの?」とか言ってきた。 体育の授業では5キロマラソンの途中に靴はぬげるし、 英語の授業では日本語訳しろと言われて、言ってみたら全く違っていてクラスの連中に笑われて、 朝ご飯同様、弁当もいつもよりまずくて(これは気もちの問題かもしれないが) 弁当食べ終わった後にトイレに行くと、清掃中。 とにかく、散々な一日だったんだ。 こんだけあってイライラしない人間なんていないだろ? でも、それだけなら俺もあんなとちったことはしなかったかもしれない。 まあ、そりゃそうだ。この時点ではとちるきっかけがなかったからな。 で、ことの起こりは5時間目と6時間目の休憩時間に起こった。 その途中、俺は背中に鋭い痛みを感じたわけだ。 こりゃあ、いつものシャーペンをつついてくる感触だな。 「今度のみくるちゃんのコスプレなんだけどすっかり忘れてたわ。今度はスッチーよ!最近そういうドラマが多いしね。で、今回はあんたが衣装料だしてちょうだい」 「何で俺なんだよ?」 「あたしは今お金ないの。それにいっつもみくるちゃんのコスプレ衣装はあたしが買ってるのよ?ああいうのは団員から徴収するものよ。今まであたしが出してあげてたことに感謝してほしいぐらいだわ」 そして、俺はその言葉にブチ切れてしまったわけだ。 「そんなことはどうでもいい!だいたいオレは別に朝比奈さんにスッチーのコスプレをしてほしいとも思ってないし、だいたい朝比奈さんにも迷惑だろ! それよりもだ、だいたいSOS団が発足してから罰金罰金、俺が悪くなくても俺の奢り。今までお前のせいでなくなった金はいくらだろうね?5桁は軽くこすね。あやうけりゃ6桁をこしてるかもしれん。 だいたいお前は朝比奈さんをおもちゃにして楽しんでるかもしれねーが、俺はSOS団のメンバーに昼食奢ってもなんも楽しくないんだ。それに、不思議なんて見つかるわけねーのに不思議探索で大事な大事な休日をつぶされるわ。 今になって思うが、ゴールデンウィーク明けにお前に話しかけるんじゃなかったよ。はっきりいってお前のその態度にはうんざりだ!」 クラスの連中は俺達を終始、唖然と見ていたように思われる。 今考えたらよくハルヒは何も言わずにその言葉を聞いてたなと思うよ。 俺はそのときのことをこれまでにないほど後悔している。 そして、そう思うのに先ほどの文句を喋り終えてから1分もかからなかった。 せいぜい、10秒ほどだろう。 俺はそのときにはもうしまった!と思ったが、言ってしまえば後の祭りである。 その間、教室は沈黙していたはずだ。それとも回りの声が聞こえないほど俺自身、後悔していたのかもしれん。 で、その沈黙を破ったのはハルヒだった。 ハルヒはいきなり机からノートを取り出し、最後のほうのページを破り、そこに『退団宣告』と、大きく書いて、俺に渡した。 「じゃあもうSOS団に来るな!バカキョン!」 すまん古泉、きっと今頃、神人はあばれほうだいなはずだ。 で、俺は何とか謝ろうとしたんだが、授業始まりの鐘が鳴り、岡部の「みんな席につけー」という言葉で俺は謝るタイミングをなくしてしまった。 で、6時間目の授業はLHR。 その時に、月に1回の席替えをして今の座席となったわけだ。 その後、この気もちを朝比奈さんのメイド服姿で癒してもらおうと部室に行こうとしたのだが、後ろでハルヒに襟をつかまれ、 俺を下駄箱の前まで運んだ後、「もう来るなって言ったでしょ」とかこれ以上にないぐらいの恐ろしい笑みで言った。 いやぁ、あれは怖かった。 俺は今日、ハルヒが学校を休んでるというわけでもないのに、ハルヒに会わずに午前中の授業を終えた。 「おいキョン、そろそろ涼宮と仲直りしてやったらどうだ?」 「僕もそうしたほうがいいと思うよ。仲が悪いキョンと涼宮さんって何か違和感があるしね。」 いや、俺もな、そうしようとは思うんだが、むこうがそのチャンスを与えてくれなさそうなんだよ。 「まあ、涼宮は頑固だからな。たとえキョンが謝ったとしても許してくれるかは疑わしいな」 「でも、やっぱり謝っておいたほうがいいよ」 それよりお前ら二人、特に国木田。なぜ俺が悪いのを決め付けて話す。 後悔してる自分が言うのもなんだが、少しはハルヒも悪いだろうが。 「まあ、かく言う俺は、お前があの変人好きハルヒとずっと続くとは思ってなかったけどな」 「そんなこと言ったらキョンがかわいそうだよ。僕はキョンのこと応援してるよ。」 おいおい、まるで俺とハルヒが付き合ってたみたいな言い方しないでくれ。 で、俺はできるだけササッと弁当を食べ終え、 先ほど、古泉から『また中庭に』というメールを受け取ったのでその場所に向かった。 「僕が話したいことは分かっていますか?」 俺が古泉のもとについたとたん、古泉はまるで分かってますよね?というような笑みを浮かべて俺に問いかけた。 まあ、予想はつくさ。 「昨日はホント、部室の中にいるだけできまずかったですよ」 「あれ?昨日お前、部活に行ってたのか。おれはてっきり神人倒しで忙しいかと思ったんだが」 「閉鎖空間は発生したんですけどね。規模が小さかったので他の仲間だけでたりて、機関には涼宮さんの観測をつづけてくれと頼まれたので、そのまま部室にとどまっていました。涼宮さんの様子では規模が小さいようには思えなかったんですけどね。 もしかしたら、涼宮さんは見た目よりも怒ってないのかもしれません・・ …それより、どうやら昨日、席替えをしてあなたのすぐ後ろの席が涼宮さんにならなかったそうじゃないですか」 「ああ」 「これは結構、重要な問題ですよ」 んな大げさな 「まあ、涼宮さんの力が衰えていて、そのような結果になったと考えると話は早いですし、そうだと、こちらとしても嬉しいのですが、確かに衰えてるとは思うのですが、そこまで衰えてるようには思えませんしね。 それと、ここからは僕の予想ですが、涼宮さんは、あなた自身から近づいてきてほしいと思っているのではないでしょうか?」 「俺はハルヒの近くになりたいと念じて近くの席になるような力は持ち合わせていないぞ」 「いいえ、そうじゃなくて、普通に近づいたらいいんです。席が離れてるのにわざわざ休み時間に話しかけてくれる、とかね。とにかく、涼宮さんに謝ってみてください」 「あいつが謝らせてくれる時間を作らせてくれると思えなないのだがな~」 「そんなことはないと思いますよ。まあ、時と場合によるでしょうけどね」 「それに、何度も何度もしつこくて余計嫌われないか?」 「それはあなたの謝り方にもよるでしょう。それにしても、やはりあなたも涼宮さんに嫌われたくないんですね」 「そういうわけじゃねーよ」 「まあ、こちらもできるだけあなたに謝りやすい環境を作って差し上げることにしましょう。できたら今日中に仲直りしてくれたらこちらとしてもありがたいのですが」 まあ、そうは言うものの、その後にハルヒに謝ろうと近くによっても、俺に気づくとすぐにどこかに行ってしまう始末である。 しかたない、明後日の日曜日になんとか謝るか。 古泉が言っていた謝りやすい環境とはこうだ。 明後日は俺ぬきでいつもの不思議探索パトロールをやるらしく、うまくやってハルヒを公園まで連れて行き、そこで俺とばったり会って俺が謝るという設定。 もちろん、明後日は2:2で別れると予想され、ハルヒは誰とペアを組むか分からない。そのため、長門と朝比奈さんにもこのことを伝えておくとのことだ。 で、公園への誘導方法は「最近、公園で幽霊を見たという人がいるらしくて」とハルヒに言うつもりらしい。 とりあえず、朝比奈さんがハルヒとペアにならないことを祈ろう。 嘘がつけなさそうな人だからな。 で、その日曜日になったわけだ。 俺はなぜか、普段の不思議探索の日よりも早い時間から公園にいる。 とりあえず、ハルヒが来るまで誰とペアになったんだろう?ということを考えておこう。 古泉とペアになったらどうだ? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、有希とみくるちゃんは南お願いね!」 で、古泉が、 「そうそう涼宮さん。こないだ知人に聞いたのですが、そこの公園で幽霊らしきものを目撃した人がいるらしいです。」 で、ハルヒは目を輝かせて、 「それホント!そりゃあ行くしかないわね!」 ということで順調にいきそうだが、その場合長門たちがどうなるか気になるな。 まあ、こっそりついてくるっていうのが一番ありえそうか。 じゃあ、長門とペアになったらどうだ? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、古泉君とみくるちゃんは南お願いね!」 で、長門が、 「こっち」 と言ってそれ以外何も言わずに連れてきそうだな。 ハルヒは長門には従いそうだから。 だが、その場合、古泉が朝比奈さんとペアだからな。それが腹立たしい。 じゃあ、朝比奈さんとペアになったら? 「じゃあ、あたし達は駅の北を探すから、古泉君と有希は南お願いね!」 で、朝比奈さんが、 「あ、あの・・・こ、公園に・・・えっとキョ・・・じゃなくて、ゆ・・・」 「あぁ、もう何が言いたいの?いいからさっさと行くわよ。そうね、今日は新しい衣装を買ってあげる」 「ひょえー」 ……やっぱり朝比奈さんじゃダメそうだな。 で、30分ほど待っただろうか? 結局、俺の元にきたのは4人全員だった。 ハルヒは俺に気づいたとたん、後ろの3人を睨みつけているようだった。 ハルヒの顔は見えんが、古泉と朝比奈さんは苦笑している。 長門は、いつもどおり無表情だけどな。今回ばかりは何も読み取れん。 まあいい、とりあえず古泉に言われたとおりに実行しよう。 「俺はパトロールに呼ばれてないぞ」 「あんたはもうSOS団じゃないでしょ」 とりあえず俺は、古泉の言われたとおり一息おいてから、 「こないだは悪かった」と、謝っておく。 「その日は、いろいろ不運続きでな、ついつい八つ当たりしてしまった。とにかく、言葉が自分の意図とは関係なく出ちまって。中には自分でも信じられないことを言っていた。 もし、あの時谷口に『あんな変な部活さっさとやめろ』みたいなことを言われたら、お前に言ったことと全く逆のことで、谷口を怒鳴っていたと思う」 ハルヒは何も言ってこない。少しは何か言ってくると思ったんだがな、だがこのほうがいい。 「本当にあの時は不運続きだった。まあどんなことがあったかは話せば長くなるから言わないが、その時の俺で一番の不運はやっぱり、お前に退部宣告をさせられたことだ。そのときに起こったいろんな不運がどうでもよくなってしまうほどな。嫌なら毎日行ってなかったさ。 だからさ、お願いがある。もう一度、SOS団に入らせてくれないか?」 終始沈黙が起こった。 どんだけ続いただろうな。って言っても、1分もかかってなかったと思うが。 その沈黙を破ったのはまたもやハルヒだった。 「罰金」 普段より小さい声でハルヒはそう言った。 一応、はっきりと聞こえたが「なんだって?」と聞いてみる。 「罰金よ罰金!あたしにあんなこと言ってタダですむと思ったら大間違いよ!そうね、フランス料理のフルコースをSOS団全員分で済ませてあげるわ。いい?あたしは別に許したわけじゃないわよ!あんたがいなくてもSOS団はやっていけるしね。 ただ、こっちの3人がキョンがいなくちゃ嫌なようだから、あんたをSOS団に再入団させてあげる!でも、今度あんなことをあたしに言ってみなさい。その時は死刑だから!」 何でだろうな?怒ってるのにどこか嬉しそうだ。 後ろの3人も。 それにしても、今回は急激に俺の財布が軽くなりそうだ。いや、札がコインに変わるだろうから重くなるか。 だがまあいい、今回ばかりは諭吉様も笑ってらっしゃるようだしな。 次の日、俺は教室の後ろのドアから入って、「はよ!」とハルヒに声をかけてから自分の席に向かった。 ところで、何で今日はポニーテールなんだろうな? でも、席はやっぱり離れ離れ・・・か。 まあ、たった1ヶ月だ。その分授業に集中できそうだからいいじゃないか、俺。 で、今日は珍しく岡部は鐘が鳴る2、3分ほど前に教室にやってきた。 腕時計を見る。教室の時計を見る。腕時計を見る。もう一度教室の時計を見る。ああ、早く来ちまったーと後悔してる。 一番前の席もなかなか面白いじゃないか。 で、岡部が腕時計の針を動かしていると、その岡部に何か話しかけてる生徒がいた。 何話してるんだろうね~? ハンドボールのやり方を教えてほしい。とかか? まさか進路のことじゃないだろう。さすがにまだ早すぎる。 とか考えてると、岡部がこっちを見ていることが分かった。 おいおい、まさか俺に対する文句を言ってたんじゃないだろうな? ハルヒじゃなくて何で俺なんだ? と思っていると、岡部が今度は近づいてきた。 何言われるんだ俺? 「なあキョン」 先生もその名で呼ぶんですか・・・ 「こいつと席変わってやってくれないかな?」 ………え? どうやらその生徒は最近目が悪くなってきたらしく、後ろのほうの席じゃあ黒板の字が見えにくいということだ。 で、なぜ先週言わなかったかと言うと、先週は目を細めてなんとか見ていたというのだが、やはりそれじゃあ疲れるということで、岡部に相談したらしい。 ちなみに、その目が悪くなった生徒がどこの席だったかは、ご察しのとおりだと思うぞ。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3189.html
突然ですが、ここで問題です。 複数の組織から「進化の可能性」、「時間の歪み」、「神」などと呼ばれ、しかし自分は「団長」だと信じてやまないのは誰でしょうか? …………………………………………。 はい、答えは「涼宮ハルヒ」です。画面の前のみんなは、わかったかな? なーんて紹介の仕方をしてみたが、この涼宮ハルヒ、大学生になった現在も全快ブッチギリである。 何が全快ブッチギリかと言えば、もうお分かりだろう。SOS団の活動、および日頃の傍若無人っぷりだ。 高校卒業から大学進学、それから2年への進級と色々やらかしてくれたりしたがここはごっそりと割愛しよう。きりがないからな。 まあ紆余曲折あって現在もあの閉鎖空間を発生させたりなんやりする能力は健在な訳で、 それを監視する立場の朝比奈さんや長門、古泉も毎度の騒動に巻き込まれ続けている。 誰が望んだのか俺とハルヒと長門と古泉は揃いも揃って同じ大学に入学。まあこうなるにも色々とあったが割愛だ。 朝比奈さんはどこかの会社に就職したことになっているが、どこで働いているのかを尋ねると、 「禁則事項です」 の一点張り。その麗しい唇は硬く閉ざされている。 して、今回はクリスマスの特別イベントとしてハルヒが「SOS団クリスマス大かくれんぼ大会」なんてものを企画したがために これまた厄介な出来事に、鶴屋さんや妹も含めて巻き込まれていく訳だ。 いい加減、普通のクリスマスを過ごしてみたいもんだぜ……。 さて、季節は誰がなんと言おうと冬。 今年ももう来年へ渡す襷を肩から外し、ひっしとその手に握って中継所へとラストスパートかけている頃だ。 何事もなくその襷リレーが行われればよかったのに、涼宮ハルヒはそれを許さなかった。 昨日、ハルヒから、 「明日朝8時に駅前に集合ね。泊まりの準備もしといて。遅れたら承知しないから」 との電話がかかって来た。今日は12月24日。ご存知のとおり、クリスマスイヴである。 まあ、SOS団がクリスマスに何かしでかさなかったことなど一度もないし、今年も覚悟はしていたがこういう連絡はもっと早い段階でしてもらいたいもんだ。 とは言え、俺は事前にハルヒから連絡が来ることを知っていた。ソースは、現在何故か俺の隣の部屋に住む鶴屋さんだ。 なんでも鶴屋さんの実家が所有している別荘を使えるように古泉から要請があったらしい。 「一樹くんからは何するかとかは聞いてないけどさっ。ハルにゃんのことだから楽しいことになるんじゃないかなっ」 と鶴屋さんは笑っていたが、俺からすればそんなウキウキ気分なんかには全くなれず、 どうせ起こるだろう突拍子もない事件に思いを馳せれば、ツーメランコリーな気分になる。 鶴屋さんもわざわざ別荘を提供しなくてもいいんですよ? ここ最近は俺の部屋に居候中の、やけに早起きな妹によって6時前の起床を余儀なくされていた。 だからハルヒの設定した集合時間の8時には楽勝で間に合い、ちんけな罰ゲームを受けるにいたるはずはなかった。 なかったはずだったんだ…………。 朝、目を開けると外はすっかり明るくなっていた。 妹より先に起きちまったか。 そう思って時計を見た瞬間、俺の背筋は液体窒素にぶち込まれたバラの花の如く凍りついた。 枕もとの時計の長針は6を、短針は7と8の間を指していた。 俺が約20年の人生で得てきた知識をフル動員するとそれは7時30分を表している。 どう考えても遅刻です本当にあり(ry などと誰に向けているのかよく分からない感謝などしている場合じゃない。 安らかな顔で眠る妹を叩き起こして驚くべきスピードで準備し、家を出た。 あの遅刻しそうなときの人間の行動の速さはなんだろうね。 まあそんなことはどうでもいい。早くいつもの駅前に行かなければ。 妹を愛チャリの後ろに乗せ、冬なのに汗ばむほどのスピードで駅に向かった。あの時の俺は風と1つになっていたと言っても過言ではないね。 そこから図ったようなタイミングで駅を出た電車に飛び乗り、車内で簡単な朝食をとった。 駅に着いて電車を降りるとオリンピック選手顔負けのスタートダッシュで改札をくぐり、いつもの集合場所に向かう。 やはりというかなんというか、ハルヒたちSOS団メンバーと鶴屋さんはすでにそこにいた。 「遅い!18秒の遅刻よ!」 ハルヒは息も絶え絶えの俺たち兄妹の前で腕組みで仁王立ちしている。 「当然、然るべき罰を受けてもらうわ。ていうか、何で妹ちゃんまでいるの?来るなんて聞いてないわよ」 俺が言う前にお前が電話を切ったんだろうが。お前はいつもそうだ。 「まあいいわ、一人くらい増えたって大丈夫でしょ。ね、古泉くん?」 「ええ、おそらく問題ないかと。どうです?鶴屋さん」 「うん、めがっさ余裕だよっ。あそこはけっこう広いからねっ」 鶴屋さんのけっこうと、一般的なけっこうの定義にはかなりの相違があるので、今回の別荘もかなりでかいんだろうな。 と、言うことでつつがなく妹の参加が決定し、SOS団+αは電車に乗って一路北に向かった。 乗車の直前に罰としてこれでもかと菓子とジュース類を買わされた。 親父からの少し早いお年玉があったから、問題なかったけどな。 電車内ではハルヒを中心に古泉が持ってきたトランプやらUNOやら麻雀やらなんやらで馬鹿騒ぎし、 電車が別荘の最寄り駅に着いた頃にはメンバー一同妙な疲労感を感じていた。けっこうな長旅だったしな。 駅から出ると、これも毎度おなじみとなった新川執事と森園生メイドが待っていてくれた。 「お久しぶりです。また会ってしまいましたね」 「いえ、我々も最近、涼宮様に振り回されるのもそう悪くないと感じてまいりました」 新川さんはハルヒには聞こえないくらいの声でそうおっしゃり、小さく笑った。 森さんも肯定するかのように笑んでいる。この人たちとあったのは5年前か。 ことあるごとに召集されて、いつも本当にご苦労なことだ。心から労いの言葉を捧げたい。 その後、俺たち一行は新川さんの運転する小型バスに乗って別荘へと出発した。 バスの座席は一般的な2席セットのものがズラッと2列並んでいるのではなく、 テレビでたまに見るような、こうグルッとソファのような座席があるやつになっていた。 「キョンくん、今日はごめんね。あたしが寝坊しちゃったから……」 「かまわんさ。お前に頼りきっていた俺にも非がある」 「ううん、私のせ「まったくね。あんたもそろそろちゃんと遅れないようにしなさいよ。本当にSOS団員としての自覚が足りないわね」 おそらく、私のせいだから、と言おうとしていた妹をハルヒが遮ってきた。 お前、もう少し空気を読め。そんなんじゃ某巨大掲示板で「ゆとり乙」とか叩かれるぞ。気をつけろよ? 「そんなことよりハルヒ、そろそろ何をしでかそうとしてるか教えてくれてもいいんじゃないか?」 「秘密よ、秘密。こういうことはギリギリまで知らされてないほうが面白いでしょ?」 いいや、面白くないね。そうやって自分の物差しを他人に押し付けるのは良くないことだぞ。 「とにかく、今日は思いっきりスキーして遊ぶわよ」 どうやら今向かっている別荘はいつぞやの別荘同様にスキー場に隣接しているらしい。すさまじい財力だな、恐るべし鶴屋家。 そう言えばもう1つ、確認しておきたいことがある。古泉に尋ねてみる。 「なあ、また吹雪に巻き込まれて……なんだ、クローズドサークルとかになったりしないよな?」 「それはおそらくないでしょう。今回涼宮さんは事件を望んでいる訳ではありません。もっと明確な目的が今の彼女にはありますからね。 彼女にとってクローズドサークルなど邪魔になるだけです。天気も今日、明日と晴れの予報が出ていますしね。 まあ、あの予報士の予報なのでその精度にはいささかの不安がありますが」 そうかい、それならかまわん。不安要素が1つ減った。 「到着でございます」 バスが止まり、新川さんの渋い声が車内に響く。 「荷物は我々が先に別荘に運んでおきますので、皆さんはここでお降りになってください」 森さんの好意に甘え、俺たちはバスを降りた。 まあ、好意ってたってそれが森さんの仕事ってことになってるんだから当然っちゃあ当然な訳だが。 「では、定時にお迎えにあがります」 「お気をつけて」 新川さんと森さんの乗ったバスを見送り、俺たちはゲレンデに向かう。 いやはや、まさかこんな景色が見られるとは思わなかった。 ゲレンデからは麓の街並みや遠くの山々が一望でき、冬の澄んだ空気の助けも借りて壮観の極みを体現していた。 「さぁ、滑るわよ!競争よ、競争!」 ハルヒにはそんなもの関係ないようだが。 スキーウェアなんかは既に用意されており、各自がそれぞれの体のサイズにあったもの着込んだ。 驚きだったのは妹の分もしっかり用意されていたことだ。 「鶴屋さんから妹さんが居候しているという情報は得ていたので用意しておきました。 きっと妹さんも参加されると思ったので」 うむ、今回ばかりはgjだ、古泉。何故に妹のサイズを知っていたかに関しては、特別に黙認してやる。 今回、俺はスキーではなくスノーボードに挑戦することにした。 スキーはそれなりに出来るがスノボは初体験だ。スノボにおけるロストヴァージンだな。 ………………すまん、今のは妄言だ。忘れてくれ。 とにかく、俺はなかなかの苦戦を強いられた。 見かねたのかは知らんが、順調にスキーを滑り倒していたハルヒがわざわざスノボに履き替えて指導してくれた。 それは非常にありがたいのだが、 「シュバッと立ったら、つつついーーっと滑って、転びそうになったらグワッとバランスをとるのよ。 方向を変える時はこうアベシ!ってするの。止まるときはヒデブ!っと気合で止まるの。気合が大事よ」 と、非常に抽象的で訳のわからん説明で、そんなもので上達する訳もなく俺は雪まみれになっちまった。 第一、そんな気合で止まったら、俺はもう死んでしまう。 で、スキーやスノボを楽しんだ後、新川さんのバスで別荘に向かった。 数時間にわたる長旅と、先の運動は俺たちからことごとく体力を奪っていき、 バスの中でぺちゃくちゃとくっちゃべっているのはハルヒと鶴屋さんに妹くらいのもんだ。 他のメンバーはグロッキー状態でしゃべる気力もない。長門はまあ割りと元気そうだが、いつものように無言を保っている。 そんなことはどうだっていい。さっさと別荘に着いて、熱い風呂に入って一休みしたいもんだね。 結果から言うと別荘はかなりでかかった。 これを『けっこう広い』と形容する鶴屋さんの感覚は多少なりとも麻痺しているのかもしれない。 一見すると純和風の超高級老舗旅館の風情だ。『@と@尋の神隠し』に出てくる湯屋を思い出してほしい。 あれをふた周りほどスケールダウンさせればちょうどこの別荘くらいになるんじゃないだろうか。そのくらいのでかさだ。 新川さんの案内で中に入ると異様な光景が目の前に広がっていた。 どこまでも続くのではないかと勘違いしてしまうくらい長大な廊下に、びっしりと日本兜が並べられていた。 いかめしいその和製鎧たちの隊列に俺たちは思わず気圧されてしまう。 朝比奈さんなんてカタカタと震えている。それがまた俺の庇護欲を著しく掻き立てるんだな、うん。 「すごいっしょ、これ。実はうちの爺さんがこういうの集めるのが趣味でねっ。 最初は家に置いてたんだけどめがっさ邪魔になってきたんでここに置いてるんだよ。 てかここはそのために爺さんが建てたんだっ。馬鹿だよねっ、アハハハハ」 馬鹿かどうかは分かりかねるが、鎧兜の保管のためだけにこんな家を建てる精神状態は俺には到底想像できない。 世の中ぶっ飛んぢまってる人ってのは結構いるんだな、と感心しておこう。 「では皆さんのお部屋にご案内します。皆さんのお部屋は2階にございます。 1人1部屋とさせていただいておりますが、よろしいですかな?」 「いいわよ」 と俺たちの意見を聞くこともなくハルヒが返事し、そういうことになった。 「え……あたし誰かと一緒がいい……」 ほらみろ、妹がこう言ってるじゃないか。 「じゃあ、あたしのところに来ますか?」 妹は朝比奈さんの助け舟に、 「はい!」 と言って乗り込んだ。いやあ、本当に朝比奈さんはお優しい。 はちきれんばかりのあの御胸の半分は優しさで出来ているのかもな。 一旦部屋に案内してもらった後、少し早めの夕食となった。 案内された部屋はだだっ広く、畳と板張りの床が半々になっていた。一番奥には神棚が祭られ、 壁にはミミズの這ったような筆跡の、おそらく格言的な言葉が描かれた毛筆の書や、長刀用の竹刀に木刀などがかけられていた。 「ここはねっ、爺さんが無理言って作った武道場なんさっ。弟子をたくさん引き連れて、ここで稽古をつけてたなっ」 そんな武道場に整然と並べられた座布団に俺たちは座った。 武道場に流れる張り詰めた空気に思わず背筋が伸びてしまう。 と、森さんが漆塗りの膳を持ってきてくださった。膳の上には和を感じさせる品々が並んでいた。どれも美味そうだ。 しかし、無骨な武道場で、和膳を運ぶエプロンドレスのメイドというのはなんだかシュールな画だった。 「いっただきま~す!」 ハルヒを先頭に、俺たちは食事を始めた。 おそらく新川さんによるものと類推されるメニューたちは、どれもとびきりの破壊力を持ってして俺の味蕾を刺激した。 これを不味いと評する美食家がいたら、そいつは確実にモグリだね。 左隣の妹を見ると、一品一品をじっくり噛み締め、 「これはどんな味付けなんだろう……」 などと勝手に新川料理の研究をしていた。そんなに料理が上手くなりたいのだろうか。まあ、全然悪いことではないんだが。 はたまた右隣のハルヒは、 「うまっ!モグ……これもなかなかの味ね!新川さんにSOS団名誉料理長の称号をあげちゃおうかしら!」 と、やはり新川さんの料理に感動しているようだった。 SOS団名誉料理長の称号はやらんで言いと思うがな。そんなもの、新川さんのプラスに何一つならない。 そうして俺たちは新川さんによる絶品和膳に舌鼓を打った訳だ。 その後のことは特筆すべき点はほとんどない。 朝比奈さんの部屋に集まって――集められて――ゲームしたりしたくらいだ。 あとは風呂入って寝たくらいだな。男同士の露天風呂の描写なんて、どうだっていいだろ? では、話を一気に次の日、つまりクリスマス、まさにその日に移行させていこう。 朝、いつもどおり妹が俺をトランポリンにしてきたので俺はいやでも目覚めることになった。 「朝ごはんだよ」 とのことなので2人で武道場に向かう。 にしてもなぜ武道場で食事するんだろうか。 俺たちくらいの人数を余裕で収められる部屋なら、ここにはいくらでもありそうなもんだが。 ま、このSS作者の意向ってのが理由の最有力候補だな。なら、気にしてやらないのが作者のためだ。 朝食も昨日の夕食同様に、1人づつに膳が配られたのだが、その上にはトーストにバターやジャム。フルーツの盛り合わせなんかが乗っていた。 それがまた、武道場にメイドというシュールな画をさらに強くしていた。 朝食後はハルヒの判断で昼までの自由時間となった。 ハルヒは俺たちにそういった旨の支持を出してすぐにどこかに消えてしまった。 「おそらく、この別荘内の探索ではないでしょうか。昨日、そのような行動をされている様子は見られませんでしたし」 とは、古泉の弁だ。 俺と古泉、そして朝比奈さんはすることもないので武道場でトランプを始めた。 長門も誘ったが、 「いい」 とだけ言って、読書を始めていた。 鶴屋さんと妹はというと、長刀の竹刀を使い、なんか稽古を始めたようだ。 鶴屋さんによる長刀教室みたいなモノらしい。ほんと、あの人らは元気だな。 おそらく昼に集合した時に今回のメインイベントが発表されるのだろうが、 そう考えると俺の気分は下降曲線を描き始め、見る見るうちに憂鬱な気持ちになる。 今は目の前に朝比奈さんというエンジェルがいるからまだマシだが。 昼食をとった後すぐ、俺たちはハルヒによって集合させられた。 「では、これから本日行われるイベントを発表します!」 おお~~、と鶴屋さんと妹が拍手する。ハルヒには脳内補完されて大歓声になってるだろうが。 5~6枚重ねた座布団の上に仁王立ちするハルヒの顔は、腹立つくらい笑顔だった。 「思いついたのは12月の初めだったかしら?とにかく、あたしは思いついたの、面白いことを! それから古泉くんと打ち合わせを重ねてきたわ。極秘裏にね。ね、古泉くん」 古泉はいつもの半笑いのまま恭しく頭を垂れる。 「ハルヒ、御託はいいからさっさと発表してくれ」 「何よ、もうちょっとくらい人の話を聞きなさいよ」 お前が言うと説得力皆無なんだが。 「まあいいわ、発表するわよ」 ここでハルヒはたっぷりと間を置いた。一同に妙に間延びした空気が流れる。 そしてハルヒは力強く言い放った。 「これより、第一回SOS団大かくれんぼ大会を開催します!!」 頭の中に稲妻が走ったかのような衝撃があった。もう、なんだ。呆れてものも言えない。 散々引っ張っておいてかくれんぼ?小学生か、俺たちは。 鶴屋さんと妹のカシマシ娘コンビはなんかテンション上がっているが、朝比奈さんは頭の上に?マークが10個くらいありそうな顔をしている。 もしかしてかくれんぼ自体を知らないのかもしれない。 ていうか何故にクリスマスにかくれんぼなのか。あいつの脳の仕組みを解明したらノーベル賞モノかもしれない。 「文字どおりSOS団によるかくれんぼ大会よ。鶴屋さんや妹ちゃんもいるけど、名誉顧問に準団員だから問題ないわ」 いつ妹は準団員になったんだ。即刻の退団を要求したい。 「詳しいことは古泉くん、説明よろしく」 面倒なことは他人に押し付けるハルヒだ。 「では、僭越ながら……。基本的には通常のかくれんぼと同じルールです。鬼が隠れている人を探す……、それだけです。 ただし、今回はこんなものを用意しました。お願いします」 古泉が新川さんと森さんに目配せすると2人は俺たちに何かを配りだした。 受け取ったそれは携帯電話。しかも旧式のものだ。 「少し古い機種なのは御用者ください。古いほうが細工しやすかったもので」 「細工?」 「はい、ちょっとした細工が施してあります。まずは、その説明をしましょうか。 皆さんがお持ちの携帯にはさまざまなアプリが入っています。左上のアプリボタンを押してください。 アプリの選択画面になったはずです」 確かに、3つのアプリが画面上に表示されている。 「まず一つ目のアプリ。画面上では右端に表示されているものです。 これは隠れている人、ここでは便宜上『ハイダー』と呼ばせていただきますが、ハイダーのおおまかな位置が表示されます。 アプリを起動してみてください」 アプリを起動すると部屋の見取り図のようなものが表示された。 「では、3のキーを押してください」 古泉の支持に従うと画面が切り替わり、また別の見取り図が表示された。一番大きな部屋に赤い点が寄り集まり、明滅を繰り返している。 「その赤い点が我々の位置を示しています。そして先程のように階数に合わせて任意の数字キーを押すと、 その階の見取り図と位置情報が表示されます。この建物は4階建てなので4までの数字キーがこのアプリに対応することになりますね。 ここは3階なので3のキーを押しました。離れを確認する際は、1階は5、2階は6、3階は7を押してください」 「なあ古泉、こんな機能があったらすぐに鬼に見つかっちまうだろ」 「安心してください。鬼にはこのアプリは使用できません。それについては後で説明します」 了解した。説明を続けてくれ。 「はい、では続けます。この赤い点ですが、その点が誰かは表示されませんのであしからず。 では次のアプリです。先程のアプリのとなりにあります。これは先程のアプリと同様の操作で鬼、 ハイダーに合わせて、ここでは『シーカー』と呼んでおきましょう。シーカーの位置情報が表示されます。 ただし、使用できるのは一台につき3回まで。また、起動してから1分でアプリは自動的に終了します。有効に使用してください」 「では次のアプリ。……ですが、先の2つのように、このアプリはハイダーには特に役立つものではありません。 テトリスなどのミニゲームが収録されています。隠れている間の暇つぶしにでも使ってください」 また妙に怪しいアプリだな。ゲームに熱中させている間にハイダーをゲッチュー、ってか。 「また、ハイダーがシーカーに確保されると、それぞれの携帯に報告のメールが送信されます。 そして、メモリー内には各人の携帯番号が登録されています。電話での情報交換等に使用してください。 ただしメールを受信することはできますが、送信することはできないようにしてあります」 「それで全部か?」 「いえ、まだあります。まず、ハイダーが残り2人になるとハイダー側の携帯は一切の機能が停止します。 ただし、片方1人の確保を伝えるメールを受信する必要があるので、電源を入れた状態で持っておいてください。 また、先程説明した機能以外は使用できなくなっています。これで携帯についての説明は終わりです。 質問はありますか?」 皆、無言で質問が無い意思を示した。 朝比奈さんは本当に理解しているのか、いささか心配だが、あとで詳しく教えてさしあげよう。 「ではルールの説明です。基本的には先程言ったとおり、普通のかくれんぼです。 今回の変更点としましては、ハイダーは確保されるとシーカーになる、このくらいです。 また、シーカーの携帯にはハイダー確保のメール受信と、電話機能しかありません。ハイダーが確保されると携帯のその他の機能は停止します。 シーカーはハイダーを確保したらハイダーの携帯の『#』と『*』を同時押ししてください。 そうすることで各携帯にメールが送信されます。ハイダーは見つかったら素直に携帯をシーカーに渡してください。 なお、誤って#と*を同意押しするとシーカーに見つかっていなくても、見つかったことになりますので注意してください。 説明は以上です。質問を受け付けます」 これも、質問は無いようだ。それにしても古泉、このSS一番の長台詞、お疲れ様。お前はよくやったよ。 「では、そろそろ開始しましょう。隠れる場所はこの本館と別館の内部と連絡路です。外に出たり、危険な場所には隠れないように。 最初の鬼は新川さんと森さんです。優勝者には商品がありますのでがんばってください。鬼が動き出すのは10分後です。 では、涼宮さん」 「ありがとう、古泉くん。 オッホン。ではこれより、SOS団大かくれんぼ大会を開始します!! レディ~~……ゴウ!!!」 ハルヒの号令で俺たちは武道場に新川さんと森さんを置いて駆け出した。俺もダッシュだ。 一応、勝負事だしな。俺だって勝ちたいさ。 ここで、鶴屋家別荘の大まかな説明をしようと思う。 まず本館、4階建てだ。1階には玄関から続く長い廊下に大小3つの練習場、倉庫がある。階段横の裏口は別館への渡り廊下に続いている。 2階は宿泊スペース。30近い部屋で埋めつくされている。 3階にはさっきいた武道場がある。ここが一番広い部屋になっている。他には倉庫があるくらいだ。また、別館への連絡路がある。 4階は炊事場や浴場などの生活に必要な諸施設となっている。 別館は3階建て。1階には事務室や休憩室があり、2階・3階と武道場になっている。広さは本館の3分の1くらいか。 俺は一旦1階まで降りて別館に行った後、3階まで上がって本館に戻り、4階に上がった。 この遠回りに深い意味はないのだが、軽いかく乱になるかと思ったんだ。 なんだか新川さんはかくれんぼのプロの気がするからな。いや、なんとなくなんだが。 僅かな音さえ認識して、それを頼りに探しそうだもんな、あの人。 4階に着くと、浴場の脱衣所に設置されたロッカーの1つに身を潜めた。もちろん、男湯だ。 少しすると、携帯がぶるぶると震えた。メールが来たようだ。 [これより、行動を開始いたします] とだけ書かれた本文は、シンプルな文面ながら確実に新川さんと森さんが動きだしたことを知らせた。 しかし、なんだかテンションが上がってきたな。 さっきは小学生か、なんて言ってしまったが、これはけっこう楽しい。隠れてるだけなのにな。 とりあえず、アプリを起動し各ハイダーの位置を確認する。 本館の1階と2階に隠れている奴は1人もおらず、2階に2人、4階には俺を含めて2人、別館の各階に1人づつ隠れているようだ。 皆、微動だにせずじっとしている。さあ、最初に捕まるのは誰か。 といきなり電話がかかってきた。 『もしもし、キョンくん?』 「なんだよ、電話するには少し早いんじゃないか?」 『いや、今どこに隠れてるのかな、って思って。今どこに隠れてるの?』 「本館4階の浴場だ。お前は?」 『あたしは2階の部屋に隠れてるよ。まあそれだけだから。じゃあねぇ!』 ツー……ツー………… いきなりなんなんだ、妹よ。お前の行動もイマイチ掴みどころがないな。 と、また電話がかかってきた。 『キョン、今どこにいるのか教えなさい!』 「本館4階の浴場だが?それがどうしたってんだ」 『4階ね。わかったわ。じゃ』 ツー……ツー………… ハルヒに至っては自分の場所も教えん始末だ。なんか、フェアじゃないぞ。 と、またまた電話だ。 『もしもし』 やけに済ました声が聞こえる。今度は古泉か。 「なんだ。俺に電話をかけるのがブームなのか」 『はて、なんのことでしょうか?まあいいでしょう。今どこにおいでか教えていただきたいのですが』 「お前もそれか。今日でもう3人目だ」 『3人目?他に誰が?』 「ハルヒと妹だ」 『なるほど。流石、と言うべきですね。それより早く場所を』 「本館4階の浴場だ」 『なるほど……。わかりました、僕は別館の3階にいます。では、健闘を祈ります』 ツー……ツー…………。一体奴らはなんなんだ。 しばらく隠れていると携帯が振動した。メールだ。 [開始から7分24秒、古泉氏を確保] やはりというか、古泉が最初か。にしても早いな、おい。やはり超絶スネーク執事新川氏の成した所業だろうか。 ん?スネーク?何を言ってるんだ、俺は。 とりあえず、アプリを起動。各人の位置確認だ。 別館の1階にあった点が猛烈な速度で本館に移動している。 と、またメールを受信した。 [古泉氏確保から1分09秒、鶴屋氏を確保] 早い。いくらなんでも早すぎる。 これは新川さんがスネークとかそういう問題じゃない。あ、またスネークって言っちゃった。 これは何か裏があるはずだ。考えろ……古泉発見から鶴屋さん発見までになにがあったのかを……。 刹那の思考の後、俺は1つの答えに辿り着いた。 俺はすぐさまロッカーから飛び出し、階段を駆け下りる。携帯のメモリーから古泉の番号を探り、電話をかける。 奴は、すぐに電話に出た。 『なんですか?ハイダーがシーカーに電話するなんて、あなたも命知らずの人ですね」 「てめぇ、はめやがったな」 『おや、もう気づいてしまいましたか。しかしはめた、というのは心外ですね。これは戦略です』 うるさい。お前、次に会ったら2発ぶってやる。親父にもぶたれたこともないであろうその頬を、2度もな!! 『それは非常に困りますね』 すかした古泉との電話に早々に嫌気がさし、電話を切る。 奴、そしてハルヒと妹がしたのは、よく考えれば極々当然のことだ。奴らは事前に各ハイダーの位置を把握していた。 そして、いざシーカーになった時、その位置情報でハイダーを探す。ただそれだけだ。 そうしておけば誰かが見つかった時に、少なくとも1人の鬼の位置がわかることになるしな。 妹さえ気づいたというのに。チクショウ、俺のスペックは妹以下かよ。 と、ハルヒから電話だ。 『キョン、今どこにいるか教えn「だが断る」』 やはりな。もうその手は食わん。すぐ後に妹からも電話がかかってきたがもちろん無視だ、無視。 俺は本館2階をひっそりと歩きながら二つ目のアプリを起動した。鬼の位置を確認するアレだ。 今、鬼は新川スネークに森さん、古泉に鶴屋さんの4人だ。開始から10分足らずでこれか。 古泉のことだから事前にスネークたちと打ち合わせていたに違いない。ハルヒを1位にさせたいだろうからな、あいつらは。 画面に視線を戻し、俺は2のキーを押す。そして、俺の点を見た。 …………そこにはハイダー、つまり俺を示す赤い点のすぐ後ろに鬼を示す青い点があった。 恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはメイド・オブ・ザ・イヤーを贈っても遜色のない美人メイドが立っていた。 「キョン様、見~つけた」 森さんの口から”~”が飛び出るとは思わなかった。それにしても今のは反則的なかわいさだった。 「では、携帯電話をお渡しください」 かくして、俺は5人目の鬼となった。 10分も経たないうちに3人が見つかる、という驚異的な展開の速さを見せたかくれんぼも、ここに来て停滞の体を見せ始めた。 俺が鬼になってから30分以上経つが、誰も見つかっていない。 一番驚きなのが朝比奈さんが見つかっていないことだ。あの人のことだからすぐに見つかってしまいそうなもんだが。 俺の予想としては1位ハルヒ、2位長門、3位鶴屋さんってとこだったんだが、 鶴屋さんは早々に見つかって鬼になっているし、勝負の世界では何が起こるかわからんね。 しかし、こんな出来レースも珍しいな。古泉を始め”機関”の連中は何がなんでもハルヒを1位にするだろう。 朝比奈さんや、長門も、直接的な動きは無くともそうなることを願っているはずだ。 しかし、ハルヒがそんな事情を知るわけがなく、見つかりたくない一心で変な能力を発揮しかねない。 早いとこ、ハルヒ以外の3人を見つけたほうが懸命だな。 3人を求め、広大な本館の2階を歩いていると、廊下に段ボールが落ちているのを見つけた。 怪しい、実に怪しい。これを怪しいと思わない奴がいるとしたら、そいつの辞書に俺が「怪しい」という項目を足してやる。 まさか、ここにハイダーが隠れているとは俺だって思わない。結果から言うと、確かに中にはハイダーはいなかった。 「…………新川さん、何してるんですか……」 段ボールの中には新川さんが収納されていた。 「見つかってしまいましたか。これは一本取られましたな」 そんなつもりは毛頭ないんですが……。 「いや、こうして潜むことで移動してくるハイダーを待ち伏せていたのです。妙案かと思われたのですが」 多分、本気で言ってるんでしょうが、これはあまりにも怪しすぎます、新川さん。 「では、この案は無しでございますな。残念です」 そのまま新川さんは段ボールを持ってどこかに行ってしまったが……あの人本気でスネークかもしれない。 いや、俺自身もスネークという言葉の深い意味はわからないんだが、何故かスネークという言葉が頭から離れないんだ。 3階を歩いていると、今度は鶴屋さんと出くわした。 「やあキョンくん、何か見っかったかい?」 段ボールに隠れている新川さんなら、とはなんだか言いづらいのでここはお茶を濁しておこう。 「全く何にもです」 「そうかい、そうかい。いやぁ、みくるも見つけらんないってのは何か悔しいにょろね」 鶴屋さんは言いながらすぐそこにあった倉庫の扉を開けた。 中には剣道の防具と思しきものが収納されていた。 「お~~いっ、みくる~!長門っち~!妹く~~ん!出ておいでよっ!」 がさがさと防具を掻き分けていく鶴屋さんの後ろを俺も探してみる。棚の影とかに隠れているかもしれない。 と、鶴屋さんの声が響いてきた。 「おっ、妹くん見っけ!」 「え?どこです?」 「さっき外の廊下を走ってったよっ。さっ、追いかけるにょろよ、キョンくんっ!」 鶴屋さんは防具の山をすっ飛ばして駆け出した。 俺も急いで走り出すが鶴屋さんがあまりに速くて追いつけない。日頃の運動不足が祟ってか、体力的な限界も間近だ。 「キョンくんっ!」っといきなり鶴屋さんがUターンしてきた。 「妹ちゃんは武道場に走ってったにょろ。あたしが前から追い詰めるから、キョンくんは後ろから回り込むっさ!」 ほとんどスピードを緩めぬままに、鶴屋さんは俺が来た道を逆方向に走っていった。 妹を挟み撃ちにする作戦みたいだな。ていうかこれ、鬼ごっこじゃないか? まあいい。とにかく早く武道場に行かなければ。俺は鶴屋さんとは逆方向に走り出した。 俺が武道場に着くと、妹がこちらに走ってきていた。が、俺を見て急ブレーキをかける。 妹は武道場の真ん中で立ち往生している。俺と鶴屋さんはじりじりと妹との距離を詰めていく。 「さあ妹くん。おとなしく携帯を渡すんだっ」 「イヤって……言ったらっ!?」 そう言い終るが早いか、妹は俺に向かって走り出した。 鶴屋さんより俺のが弱いってことか。否定はせんが、兄貴をなめるなよ。てかお前、ルールは遵守しろ。 と、俺が入ってきた入り口から新川さんが入ってきた。妹は2対1は不利と見たか踵を返して鶴屋さん方向に駆け出す。 その時だった。 「てやぁっ!!」 鶴屋さんの気合の一声と共に、妹の体が空中を舞った。 妹にぎりぎりまで近づいていた鶴屋さんは、妹にこれ以上ないほどに美しい背負い投げを決めたのだ。 「どうだいっ?参ったにょろかっ!?」 「はい……参りました……」 一瞬の間の後、2人は大声で笑い出した。 「いやはや、見事な一本でしたな」 新川さんがそっとつぶやき、渋い笑みを浮かべた。 残るハイダーは朝比奈さん、長門、そしてハルヒだ。 妹捕獲の後、俺たちは少し休憩をとることにした。そうして今4階の炊事場に向かっている。新川さんがお茶を淹れてくれるとのことだ。 やけにアグレッシブな逃走劇を演じた鶴屋さんと妹は、まるで姉妹のように俺の前を肩を並べて歩いている。 ほんと、このコンビは元気だし、仲が良いな。お互い通じるものでも感じるんだろうか。 まあ、おてんばっぷりや、意外と武闘派なとこなんかは似てるな。 「あれ、今日晴れてたよね?」 妹の言うとおり、窓から見える空は昼前までの晴天から一転、どんよりとした曇り空になっていた。 今日は1日晴れの予報だったが、本当にあてにならん気象予報士だな。 日の光を遮る雲は、まるであの空間のような灰色をしていた。 新川さんの美味いお茶――朝比奈さんのソレには劣るが――を飲んだ後、俺たちはそれぞれがバラバラになって捜索作業を行うことにした。 俺以外の3人は別館に向かうとのことだった。俺は本館をじっくり探すことにする。 『もしもし。少し困ったことになりました』 古泉から電話がかかってきたのは3人と別れて10分ほど経ってからだった。 「……それはハルヒ絡みの困りごとか?」 『そのとおりです。はっきり言いますと、小規模ながら閉鎖空間が発生しかけています』 「しかけている?発生はしてないのか。なんとも中途半端だな」 『ええ。こんなことは初めてで、僕自身上手く表現することができません。 現在、本館と離れは通常の空間と閉鎖空間との境界が非常に曖昧になっています。おそらく、涼宮さんの仕業です』 そんなこと俺に言われても困る。お前は閉鎖空間のプロだろうが。 『そうなんですが、こういった状況は想定外でした。ここは長門さんと協議したいところなので、すぐに長門さんを探し出してください』 無茶なことを言うな。と言いたいところだがそうもいかないらしい。妹を閉鎖空間に招待する気にもなれんしな。 しかし、俺たちが苦労せずとも長門はすぐに自首してきた。 自分で#と*を押し、リタイアを自ら宣告した後、俺に電話してきた。 『本館4階の書斎』とだけ。 本館4階の広い書斎には俺、長門、古泉他”機関”のメンバーが集っていた。 「これは涼宮さんの力によるものでいいですね、長門さん?」 「そう。この現象は涼宮ハルヒによるもの。 おそらく、鬼に見つかりたくない、もしくは1位になりたいという強い感情から彼女がこの現象を引き起こした。 先程私が自ら捕獲に当たる行動をした際に、閉鎖空間の占有範囲が飛躍的に向上、通常空間をほぼ侵食した。それはあなたたちも感じているはず」 つまり、ハルヒがかくれんぼで1位になりたいと願ったからこうなったのか。しかし閉鎖空間を作っても1位になれるわけじゃないだろう。 「この空間は涼宮ハルヒが1位に最もなりやすい環境に設定されている。その詳細は私にもまだ解りかねる。 また、この空間は閉鎖空間に酷似するが、厳密には全く違うもの」 「涼宮様のイライラや、不満によって生じたものではないから、ですかな?」 新川さんの問いに、長門は「そう」とだけ答え、 「この空間は通常の閉鎖空間を希釈したような性質を持っている。時間の流れも互いに同期している」 「世界を改変しようとする意思も無いですしね。我々の力も微々たる力しか発揮されない」 古泉の手の上には、ピンポン玉と同等かそれ以下のサイズの赤い玉が浮かんでいる。 「この空間も基本的には選ばれたごく一部の人間にしか出入りすることは出来ない。 しかし、この空間は現在この建物、または別館の一部の場所で通常の空間と繋がっている。情報統合思念体との連結が途絶えていないのが証拠」 つまり……どういうことだ? 「この閉鎖空間もどきは、本館と離れの中のどこかに僕らのような能力を持たない人間でも出入りが出来る入り口を持っている、ということです。 そうですね、長門さん?」 「そう。現在この空間にいるのは我々を含め8人。涼宮ハルヒは入り口の向こう側の通常空間にいる。 彼女からは私たちは視認出来ず、こちらからも彼女を視認することは出来ない」 「じゃあ、どうやってハルヒを見つけるんだ?」 「この空間と通常の空間の狭間は、彼女の体表面を薄く覆うように形成されていると推測される。 彼女が移動すれば、当然空間の狭間も移動する。その際に生じるこの空間の揺らぎを検出し、彼女の位置を捕捉する」 「お前にはそれができるのか?」 長門は数センチの僅かな首肯を返してきた。いつも数ミクロンの頷きをすることを考えれば、随分と力強い。 「まずは朝比奈みくるを確保すること。仮に朝比奈みくるが1位になった場合、この空間が完全な閉鎖空間と化し、世界が改変される可能性がある。 だから、朝比奈みくるを見つけ出して。私はここで空間の揺らぎを検出する」 こうして俺たちは朝比奈さんを見つけることになった。 「あまり長い時間この状態にするのもよくないようです。少しづつですが空間の閉鎖空間化が進んでいます」 森さんがそう言っていたので時間に余裕も無いらしい。 しばらく朝比奈さんを大声で叫んだりもしながら探したが見つからない。俺と古泉は一旦本館3階の武道場で落ち合った。 「困りましたね。まさか彼女がこんなにも見つからないとは。実は鶴屋さんや長門さんとは事前に打ち合わせていたんです。涼宮さんを1位にするように」 やっぱりこれは出来レースだったわけか。 「ええ。朝比奈さんに関しては事前に役目を与えておいて失敗をされても困りますし、どうせすぐに見つかると思ったので打ち合わせていませんでした」 つまり、そういう話を聞いていなかった俺も、お前らに役立たずと判断されたわけか。 「すいません、そういうことになります」 古泉はいけしゃあしゃあとぬかしやがる。ほんとに腹が立つ奴だな。 と、突然古泉の表情が曇った。 「どうした?」 「いえ……何か妙な気配を感じたもので……。森さんならすぐにわかるんでしょうが……。 彼女は機関の中でも空間を察知する能力に長けているんですよ。長門さんには及びませんが」 そうだったのか。超能力者の力にも得手不得手があるんだな。 などと関心していると、鶴屋さんと妹が武道場に入ってきた。4人で簡単な情報交換を行う。その時だ。 けたたましい音と共に武道場の入り口の引き戸が破られた。 「おい、なんだあれは」 そう言わずにはいられない。引き戸を蹴破って武道場に入ってきたのは、人間ではなかった。 人と大差ない大きさの青白い光を放つ”何か”が1階にあった日本兜を着込んで立っていた。”何か”は腰に佩いた日本刀をゆっくりと抜く。 「神人によく似ていますが……なんなんでしょうね。ただ、我々に敵意を持っているのは確かなようです」 古泉は手の上にあの赤い玉を作り出す。 「キョンくん、あれ……何なの?」 そうだな、妹よ。訳わからんよな、こんなもん。 「俺にもよくわからんが、とにかくかなりヤバイもんだ」 「なるほど……」 こんな説明でいいのか?なんて物分りの良さだ。 「SOS団なら何が起こっても不思議じゃないでしょ?」 全くだ。その意見には全面的に賛成だが、それほど不確かな理由はない。 そうこうしているうちに神人もどきは数を増やし、5体ほどが武道場に入ってきている。 「とりあえず、逃げないといけませんね」 「そうだねっ。けど、やっこさんにはそんな気はめがっさ無いみたいだよっ。ほら」 見ると、武道場のもう1つの入り口からも神人もどきが入ってきていた。俺たちはさながら猫に追い詰められた鼠だ。 「やるっきゃないねっ。妹くんっ!」 鶴屋さんは妹に長刀竹刀を投げ渡し、2人はそれを構えた。 「ふ~~……もっふっ!!」 古泉が超能力的エネルギーパワーボールを叩きつける。神人もどきたちの足元に着弾したそれは、閃光と共に炸裂する。 立ち上がる粉塵に向かって鶴屋さんが突っ走り、長刀を振るう。妹は背後の警戒にあたる。 俺はただ古泉たちの後ろを逃げる。闘ったりはしない。それが俺の役目だからな。 だってそうだろ?俺はただの一般人だ。まあ。妹もそうなんだが……。 神人もどきの1体が鶴屋さんへ袈裟懸けの剣を浴びせる。当たれば即死モノの太刀筋を、鶴屋さんは絶妙のタイミングで回避した。 神人の振るった剣はドガンッ、と鈍い音をたてて床にめりこむ。 世界一鋭利な剣である日本刀なら、もっと綺麗に床に入っていくと思うんだが、あれはもしかして模造刀か? 「どりゃっ」 鶴屋さんが神人もどきをなぎ払い、妹も背後の神人相手に獅子奮迅の活躍をしている。古泉は2人を援護するようにふもっふを連発。 本当に申し訳ないくらい俺は何もできない。今度妹に空手でも習うかな。うん、そうしよう。それがいい。 「さあみんな、こっちだよっ!」 鶴屋さんが神人もどきを吹っ飛ばしてできた突破口に4人で突っ込む。 だが神人もどき共は倒されても倒されても起き上がり、追いかけてくる。ゾンビか、お前らは。 「痛っ……!」 そう妹がうめくのが背後から聞こえた。振り返ると妹が右手を押さえている。なんと、血が出ているではないか。 静かに滲み出る鮮血は、妹の腕を伝ってポタポタと床に落ちていく。 奴らが持ってたのは模造刀だけじゃなかったのか。竹刀対真剣では竹刀に黒星がつくに決まっている。 証拠に妹の足元には綺麗に真っ二つにされた竹刀が転がっていた。 「妹くんっ」 うずくまる妹に鶴屋さんが駆け寄る。 その真後ろでは神人もどきが妹の血が着いた刀を振り上げ、2人に切りかかろうとしていた。 そして、無防備な2人に真剣が振り下ろされた。 気がつくと、俺は走り出していた。 一瞬、俺の耳は一切の音を感知しなかった。それだけ無我夢中だったのかもしれない。 自分でも驚くほどの速さで神人もどきに駆け寄った俺は、これまた驚くほど高く跳躍する。 刀がまさに鶴屋さんの背中に触れんとした瞬間、俺のドロップキックが神人もどきにクリーンヒットした。 神人もどきは刀を残して真っ直ぐ吹っ飛んでいく。 着地後視線を上にやると、もう1体の神人もどきが切りかかってくるのが見えた。 俺は転がっていた刀を手に取り、神人もどきの刀を受け止める。金属同士がぶつかり合う鋭い音が響いた。 神人の太刀筋はとてつもなく重かった。だが負ける訳にはいかない。ここで負けたら妹と鶴屋さんが傷つく、俺の名が廃る。 「どりゃあっっ!!」 気合一発、俺は神人の刀を払いのけ、その首を切り飛ばした。 神人もどきの頭部は青い光の跡を残しながら胴体から離れ、刹那の空中浮遊を楽しんでいた。 直後、古泉の赤玉が数個飛来し、爆発、追撃を仕掛けようとしていた神人たちを蹴散らす。 その隙に俺と鶴屋さんとで妹の肩をとり、駆け出した。もう神人もどきに追いかけるそぶりは見られなかった。 最後に振り返ったとき、俺が切り飛ばした首を胴体のみの体が拾い上げ、またその体に迎え入れているのが見えた。 長門が待つ4階の書斎に向かう途中、古泉が話しかけてきた。 「驚きました。あなたがあんな動きをするとは。さっきのあなたはとてつもなく速かったです」 そうだったのか?無我夢中だったからよく覚えていない。 「そりゃあ、もう。信じがたい速さでした。考えてもみてください。あなたと鶴屋さんたちとの距離は5メートル以上はありました。 それを、刀が振り下ろされてから2人が切断されるに至る間に駆け抜けたんですから」 それは確かに早いな。びっくり仰天だ。 「それに、あなたは神人に似た”アレ”を切断しました。当然のように思っているかもしれませんが、あれは一種の異常事態です。 普通、神人に実質的なダメージを与えられるのは僕らのような力を持つ物のみです」 「僕の推測ですが、あなたは長い期間僕や長門さんのような特異な力を持つ者たちに囲まれていたために、 僕たちの能力の一部を会得したのでしょう。長い間閉鎖空間に行くことがなかったので気づかなかったようですが」 どうやら俺は、ハルヒに振り回されて宇宙人的、未来的、はたまた超能力者的な力に触れ続けたせいで、その力を少し受け継いじまったらしい。 俺はSOS団唯一の普通キャラだったのに、これではいよいよ超人変体集団になってしまうぞ。 まあ、その力があったおかげで妹や鶴屋さんを助けられたんだから、一概に否定する訳にはいかないな。 ん?こんな力があると今後俺も面倒ごとにおいて戦力に数えられたりしないか?嫌だ。果てしなく嫌だ。 憂鬱な気分に浸りつつ、書斎に到着する。中には新川さんと森さんもいた。 妹の手当てを2人に任せ、長門にさっき起こったことを報告する。 「あれはこの空間に設定された、涼宮ハルヒを1位に仕向けるための特性の1つ。彼女を捕獲しようとする者に対し攻撃を加える。 装備もまちまち。基本的には模造刀を持つが一部真剣を装備している。おそらく、この建物の所有者がここに保存していたもの」 「確かに爺さん、刀なんかもここにおいてたよっ」 とにかく、ハルヒ探索が一層困難になったのは確かだな。だが、早く事態を解決しないといけない。 「よし、俺たちで固まって朝比奈さんを探そう。長門、お前も来てくれるか?」 「そのつもり。でも、あなたにはしなければいけないことがある」 長門の視線の先には、右手に包帯を巻いた妹がいた。その表情からは、はっきりと恐怖の感情が見て取れる。 「彼女は私たちの特異性に、ある程度の理解を示していた。だが、先の事態はその許容範囲をはるかに超えた。 あなたは彼女にすべての事情を説明する必要がある。それが、あなたの役目」 そして、俺と妹を残して長門たちは朝比奈さんを探しにいった。 「この部屋に防護フィールドを発生させる」と長門が言っていたので安心だが。 妹は無言で椅子に座り、ひたすら下を向いていた。さっきまでの活躍が嘘のようだ。近づくと、小さく震えていることにも気づいた。 俺は妹の前にしゃがみ、その手を握る。妹は、静かに泣いていた。 「怖かったな。お前にこんな思いをさせて、悪いと感じている。すまなかった」 「キョンくん……」 妹は俺に抱きついてきて、はっきりと嗚咽をあげはじめた。 俺は妹の小さな背中をそっと抱く。それくらいしか出来ることがわからなかった。 俺は妹を抱いたまま話を始めた。 ハルヒのこと、長門や朝比奈さん、古泉のこと、SOS団のこと、そして今回のことはハルヒの力によって起きたということ。 それらをゆっくりと、言葉を選びながら妹に話した。そして最後にハルヒを恨んだりしないようにお願いした。 ハルヒは好き好んでこの力を持った訳じゃないからな。恨むなら、ハルヒに力を与えた神だかなんだかの不確定な存在を恨んでほしい。 ハルヒも、あの力の犠牲者なんだ。 妹は全て理解してくれたようだ。ほんとに物分りの良い、素直な奴だ。兄としては非常にうれしいぞ。 しかし、それでもなかなか泣き止むことはなかった。まあ、腕を真剣で切られ、挙句死の一歩手前まで行ったんだからな。無理もない。 今回の事件で俺の兄としての無力さが露呈した。もっと、強くならねばと思う。ちんけな能力無しでの強さでな。 と、突然携帯が鳴った。画面には [追尾アプリ起動中] という意味不明のテロップと、見取り図が表示されていた。 数分後、長門たちが朝比奈さんを連れて帰ってきて、まだ抱き合っていた俺たち兄妹は赤面することになる。 「妹くん、長門っちが呼んでるよ」 妹が長門のもとへ行くのと入れ替えに古泉が寄ってきた。 「長門さんは妹さんの治療をするそうです。傷跡は完璧に消えるそうなのでご安心を」 そうか、そりゃよかった。 「鶴屋さんにも、ハルヒたちの説明はしたのか?」 「もちろんしました。まあ彼女も僕たちがおかしな力を持っていることには気づいていたのですぐに納得してくれましたよ」 「そういえばさっき携帯に変な画面が表示されたんだが。ありゃなんだ?」 「あれはハイダー側の携帯に仕込んでおいた発信機が作動していたんです。ハイダーの携帯にはゲームのアプリが入っていましたよね?あれはこちらが用意した罠だったんです。 アプリを起動すると自動的に起動したハイダーの位置情報がシーカーに知らされるようになっていました」 「随分と姑息な手を用意してたんだな」 「姑息とは聞こえが悪いですね。僕は『このアプリはハイダーには特に役立つものではありません』と、しっかりと役に立たないことを伝えていました。充分フェアかと思いますが」 じゃあ、そういうことにしとけ。好きにしろ。 「朝比奈さんはそのゲームアプリを起動したから見つかったのか」 「ええ。本当にラッキーでした。これで涼宮さん探しが開始できます」 朝比奈さんらしいドジで愛くるしい捕まり方だが、よくここまで粘ったな。人には意外な一面があるもんだ。 その朝比奈さんは妹を治療中の長門に向かって、 「あたし、楽しくてつい調子に乗ってしまって……本当にごめんなさい」 と、「問題ない」という長門の声も聞かずに謝り続けている。俺ならあなたにいくら謝ってもらっても問題ないんですが、あんまりくどいと逆に人を怒らせますよ? 「それで、涼宮さんですが、彼女は現在自分がで優勝したことを知っているはずです。ですが、この閉鎖空間もどきは消滅していません。 もしかしたら消えてくれるんじゃないかと思っていたんですが……うまくいきませんね」 などと古泉は貼り付けたような笑顔で言っているが、それって非常にやばいんじゃないか? 「ええ、非常にやばいです。神人もどきの強さもどんどん増しています。さっきも一度出くわしたんですが、更に大きくなっていました。 おそらくいつまで経っても自分を見つけない我々に、涼宮さんは不快感を感じているのでしょう。でも、見つかりたくはない。 そんな思いが入り乱れ、肥大化して閉鎖空間化にも歯止めが効かなくなっているんでしょう」 見つかりたくないから作り出したこの閉鎖空間もどきを、今度は見つけてもらえないイライラで本物の閉鎖空間にしようとしてるのかあいつは。カオスだな、おい。 「カオス……ですか。確かに、このSS作者も情報量の多さに事態を把握しきれず、このSSにいくつかの矛盾を発生させています。 僕にこんなことを言わせているのが何よりの証拠です。カオス、という表現が適切でしょうね」 「事態を収拾するのは簡単。涼宮ハルヒを確保すればいい」 いつの間にか妹の治療を終えて俺たちに近づいていた長門が静かに言った。 「限定空間内生命体たちの位置と、通常空間との間で発生する空間の揺らぎを比較すると、揺らぎの周辺に限定空間内生命体が分布することがわかった」 長門の言う限定空間内生命体とは、俺たちを襲った神人もどきを指しているようだ。限られた空間内でのみ活動する生命体、ってとこか。 空間の揺らぎとはハルヒのことだろうからその限定空間内生命体たちの中心にハルヒはいるんだろう。やれやれ、いよいよ面倒なことになってるな。 「その……限定空間なんとやらの数は?」 「全部で36体。真剣を装備しているのは14体」 多いな。どうせハルヒを捕まえるにはそいつらをもれなく倒さなきゃいけないだろうからとことんハルヒ探しのミッションの難易度は高いな。 「限定空間内生命体はいずれも肥大化し、強力。あなたのような人間が応戦するのはあまりに危険」 「では、我々と長門さんが協力して戦うわけですね?」 「そう。統合思念体の意向に関係なく、私はそのつもりでいる。あとはあなたたち次第」 「……しょうがないですね。事態が事態ですし、一般人を巻き込んだ手前、我々も責任を取る必要がありますし。わかりました、協力します」 ここに宇宙人と超能力組織の一時的同盟が締結された。なんとも頼りがいのある同盟だ。 「あなたちの体表面に生体防護フィールドを発生させる。これである程度の攻撃にも耐えられる」 と長門にいつかのように妹共々甘噛されて、俺たちはハルヒ確保に乗り出した。他の連中は朝比奈さん探索時にすでにやられていた。 窓の外の空はほとんど閉鎖空間と同じ灰色をしている。早くハルヒを見つけ出さないとな。 俺たちは先頭に長門と古泉、後ろに新川さんと森さんを配してその間に俺や朝比奈さんたちの一般人勢というフォーメーションに長門のナビゲーションで進んでいく。 そして本館1階に到着した時だった。 「来ます」 古泉の言うように廊下を挟んだ左右の練習場の壁をぶち破りながらゆっくりと神人もどきどもが出てきた。 神人もどきは天井の高さよりも大きくなっていて、首を折り曲げるようにして立っている。手に持っている日本刀がおもちゃのようだ。 「この限定空間内生命体の向こう側に彼女はいる」 長門は静かに両手を神人もどきに向けて掲げ高速で何事かつぶやく。すると両手から数え切れない数の白い光の矢のようなものが神人もどきたちに向かって放たれた。 それはあまねく神人もどきに命中し奴らの巨体をよろめかせる。 「我々もいきましょう」 古泉の言葉に合わせて機関の3人も攻撃を始める。 古泉は赤い玉をふもっふし、新川さんは手を銃のような形にして指先から古泉同様の赤い玉を打ち出し、森さんは前に重ねた両手から赤い円形の波を放っている。 超能力者ってのは攻撃方法も異なるのか。ほんの少し勉強になった。なんの役にもたたんが。 轟音の響く戦況を、しばらく圧倒されつつ眺めていた俺の襟首を突然長門が掴んだ。見る間に俺と長門を包むように淡い水色の膜が発生する。 俺が事態を飲み込む前に長門は跳んだ。俺共々に。 爆煙立ち込める神人もどきの間を長門は一瞬で駆け抜けて神人への攻撃を止めぬまま俺に言った。 「玄関から外に出て」 「ハルヒは外にいるのか」 「そう。私の攻撃にも限りがある。急いで」 俺は長門から離れ玄関の大戸を開ける。俺の前に広がった灰色の景色はまさに閉鎖空間だった。 と、携帯が鳴る。長門だ。 『聞こえる?』 ああ、聞こえるぞ。お前が闘ってる音もな。こっからどうしたらいい? 『そのまま何もせず、手を前に伸ばして』 …………それだけか?そんなことでいいのか? まあいい。長門の言うことに間違いなど、間違ってもない。変な日本語だが気にするな。俺は今ただ手を伸ばす、それだけだ。 何も無い虚空に俺は手を伸ばしていく。と、指先が何かに触れる感覚があり、直後に景色が一変する。 空は今朝同様に青い。もとの空間に戻ったようだ。 「あれ、あんたいたの」 しかめっ面で振り向いたハルヒの肩に俺の片手は置かれていた。もう片方の手に持っている携帯からは不通を告げる音しかしない。 「ねえ、みくるちゃんが見つかってあたしが1位になったってメールが着たのに、今の今まで誰もあたしのとこに来なかったのはどうして? キョン、ちゃんと説明しなさい」 そう言われてもな……。まさかお前が作った閉鎖空間もどきに閉じ込められて妹は腕を斬られて俺は変な力に目覚め長門と機関が同盟を組んだとは口が裂けても言えないし。 「なんでも携帯のシステムを管理してたサーバに異常が起きたらしくてな、お前の居場所を捕捉出来なかったんだ。 だからずっとお前を探してたんだ。待たせてすまなかったな」 口からでまかせにしては上手い言い訳ではないだろうか。ハルヒも、 「なら、しょうがないわね」 とご納得の様子だ。 「じゃあ早くみんなを集めて。私の表彰式をするわよ!!」 しかめっ面から一転、ハルヒは飛び切りの笑顔を見せた。 その後、3階の武道場に集まった俺たちは、かくれんぼ大会の表彰式を行った。 3位の長門には3万円分の図書券、2位の朝比奈さんには高級茶葉と最新型のポット、ハルヒには謎の巨大な箱が贈呈された。 まるで謀ったように各自にぴったりの賞品だ。ただ、ハルヒの箱の中身は最後まで教えてくれることはなかったのでわからないが。 ちなみに4位以下の参加者にはポケットティッシュが1つずつ配られた。3位との間に随分と差があるな、おい。 また、鶴屋さんと妹はこの日あったことをすっかり忘れており、ずっとハルヒを探していた記憶に入れ替わっていた。 「あれは彼女たちが保有する必要の無い記憶。生体防護フィールドを発生させた時、記憶を改変する因子を仕込んでおいた」 長門によればそういうことらしい。 表彰式終了後は飲めや食えやの大宴会が催され、俺はしばしの間今日の徒労を忘れて楽しんだ。そして、もう一泊した後、俺たちは帰路に着いた。 「今回のことは本当に予想外の事態でした」 帰りの電車の中で古泉が口を開いた。女性陣は少し離れた席でトランプを楽しんでいる。 「まさかイラつかずとも閉鎖空間同様の空間を発生させるとは思まいせんでしたから。今後の参考にさせてもらいます」 ああ、ぜひともそうしてくれ。もうあんな思いをするのは勘弁してほしい。 「そう言えば。なぜあの力を放棄したんです?今後役立つこともあるでしょうに」 古泉の言う『あの力』とは俺が発揮してしまった高速移動と神人破壊能力だ。俺は長門に頼んでこの能力を無効化する因子を体にぶち込んでもらっていた。 何故かって?決まってる。 俺は普通でないといけないんだ。俺も妹も鶴屋さんも、基本的に普通の人間であって、そうでなければいけない。 もうこの世界にはおかしな力や由来を持つ奴が嫌と言うほどいるからな。それがこれ以上増えることによるメリットなどほぼ無いに等しいと断言していい。 だから俺はあの力を捨てた。まあ未練が全く無かったと言うと嘘になるが俺は普通なんだ。後悔はしていない。 「そうですか。少しは僕の負担も減ると追って期待したんですがね。残念です」 お前は俺がどれだけハルヒにこき使われているかいまだに理解できていないようだな。いいだろう、今度小一時間みっちり講義してやる。 ああ、そうそう。ハルヒが宴会中に「年越し合宿するわよ。スタートは28日からね」と言っていたのを忘れていた。 今度も別の鶴屋さん家所有の別荘でやるつもりらしい。鶴屋さんもそれを了承していた。 どうせろくなことにはならんだろうな。まあ、いいさ。俺は普通の人間として騒動に巻き込まれていくだけだ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/22.html
キョン「なあハルヒ、お前将来の事とかちゃんと考えてるのか?」 ハルヒ「なによいきなり、あんたらしくない」 キョン「少しは現実的に考えろよ、元気なのはよろしいがそれだけじゃ生きていけんぞ」 ハルヒ「あたしはね、現実的とか普 キョン「そんな事を言ってられるのは中学生までだ」 ハルヒ「そ…それは…そうだ、古泉くんはどうなのよ」 古泉「僕も涼宮さんにはちょっと付き合いきれませんね、非常に残念ですが…」 キョン「ということだ、朝比奈さんも長門もここに来る事はないだろう」 ハルヒ「えっ…ちょっとどういうことなの!?説明しなさい!」 キョン「じゃあな、後は1人で頑張ってくれ」 古泉「それでは失礼します」 ハルヒ「待ちなさい!これは団長命令 バタン! ハルヒ「………なによみんなして…うぐっ…悔しい…」 ハルヒ「キョン大好きっ!うりうり~♪」 キョン「ハルにゃんもかわいい~♪」 古泉・みくる・長門「…」 そして… 古泉「皆さん、同盟を組みましょう、このままでは危険です」 みくる「ああ、いいぜ、だが恨みっこはなしだぜ」 長門「わかった…」 翌日 ハルヒ「みくるちゃ…熱っ!!」 みくる「ひゃ!お茶こぼしちゃいました~☆てれりこてれりこ(爆)」 古泉「あっと!すみません、足が引っかかりました」 ハルヒ「もう…なんなの…」 長門「…」バンッ! ハルヒ「痛…もういい、帰る!」 古泉・みくる・長門(…成功) キョン「あれ?ハルヒはいないのか?」 古泉「さっき帰りましたよ…それよりたまには僕と遊びませんか?」 キョン「そうだな…たまにはオセロでもやるか」 キョン「実は俺も昨日夢見たんだ」 ハルヒ「??どんな夢よ」 キョン「俺が見た夢はな、学校の敷居内にお前と二人で閉じ込められてな・・・最後にキスする夢だよ」 ハルヒ「それ!私も見た!!さっき言ったけど・・・実は悪夢じゃないんだ」 キョン「いや悪夢だろお前とキスする夢なんて、お前もう俺の夢に出てくんなよ気持ち悪いから」 ハルヒ「・・・・・・」 キョン「おいハルヒ、窓から飛び降りてくれ」 ハルヒ「は?何言ってんの?」 みくる「と、飛び降りた方がいいとおもいまぁ~しゅ☆」 長門「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる」 古泉「そうですね、僕も賛成します」 ハルヒ「ちょっと…みんなどうしたの?」 一同「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮…」 ハルヒ「ねえ、悪い冗談はやめてよ」 キョン「うるさい、飛べ!飛び降りろ!」 みくる「今すぐ飛び降りてくださ~い!!」 ハルヒ「ほ…本気なの?」 古泉「言っても無駄なようなので僕が突き落とします」 キョン「よし、俺も手伝うぞ」 ハルヒ「ちょ…やめて!本当に落ちちゃう!あ…危ない!ねえ!」 キョン「3、2、1…それっ!」 ハルヒ「あっ……… ドサッ 突然飛び降りた事になっていたハルヒが完治して学校に来ている あのことは忘れたのか久しぶりに部室にやってきた ハルヒ「やっほー!涼宮ハルヒ復活!!」 「…」 ハルヒ「団長が復活したのよ?もっと喜びなさい!」 キョン「ああ喜んでるよ…またおまえを痛めつけられるんだからな…」 キョン「なあみんな、嬉しいよな!?」 みくる「はい、また涼宮さんをいじめられるなんて…すごく嬉しいです!」 ハルヒ「え…?」 古泉「まだわからないんですか?」 古泉はハルヒの腹を殴った ハルヒ「ごはっ…げほ…」 古泉「おっと、声を出されては困りますね、口を塞がなくては」 ハルヒ「ん…んん!」 みくる「怖いんですか~♪それぇ!」 朝比奈さんはハルヒの首を絞めている ここでついにハルヒはあの時のことを思い出してしまったようだ そしてハルヒは失禁したのだ そこで俺達は手を止めた キョン「さてどうする?」 古泉「…そうですね、目を離していた時机に後頭部を強打…という事にしましょう」 キョン「それはいいな、じゃあ早速…」 そしてハルヒが気絶したと職員室に駆け込み、ハルヒは救急車で運ばれていった 翌日ハルヒは学校に来なかった またしばらく入院することになったか不登校なのか… しかし俺達は奴を引きづり出していじめるつもりだ ハルヒ「私ついていくよ~ど キョン「ついてくんな」 ハルヒ「目を見てこr キョン「見たくねーよ」 ハルヒ「私覚悟~しt キョン「キモイからさっさと消えろ」 ハルヒ「… …Gyao」 キョン「キメェwwwwwwww」 ハルヒ「私のプリン食べた?」 キョン「知らん」 ハルヒ「私のこんにゃくゼリー食べた?」 キョン「うざい」 ハルヒ「私のフルーチェ食べ」 キョン「死ね」 ハルヒ「・・・」 キョン「あ、朝比奈さ~んちょっとお茶行きませんか~?そうそう古泉と長門も誘って! ハルヒ?さぁあいつは今日は見てませんねそれはそうと行きましょうよさぁさぁ」 ハルヒ「あぁ・・・くやしい・・・・くやしいのに・・・(ビクンビクン」 岡部「時間がないから自己紹介は名前だけなー」 ハルヒ「涼宮ハルヒ ただの人間にはky」 岡部「はい次ー。」 キョン「なあハルヒ」 ハルヒ「何よ?」 キョン「おまえのポニーテール、やっぱ全然似合ってないな」 ハルヒ「!………ふぇえんっ、キョンなんて嫌い!大っキライ!!」 「おいハルヒ、目のした蚊に食われてるぞ」 「そうなのよ、痒くて痒くて堪んないのよ」 「ちょっと待ってろ、今薬塗ってやるから」 「ほら、目閉じろ・・・」 「へっ、変なことしないでよね/////」 「ほらっ、動くなよ」 「うん・・・・・」 「はい、塗りおわったぞ・・・・」 「ありがとう、キョ・・・・・・・目がっ!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「涼宮さんどうしたんですかぁ?。めがっさめがっさなんていっちゃってwキョンくんに薬塗ってもらえるなんて、羨ましいですぅ」 「・・・・・・・何塗ったの?」 「タイガーバーム」 ハルヒ「な……なんなのよぉ……!? なんでみんなそんなこと……わわ私、違うわよぉ……!!」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ガチャ みくる「あ、もうみんな来て……な、なにしてるんですか?」 バッ キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「……や……ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「……!?」 みくる「なな、なんなんですか……? やややや、ヤリマンってなんですかぁ……?」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「そ、それにさっきはみんな涼宮さんに言ってたじゃないですか……!!」 ハッ!! キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ちょちょっと!! なんで私のほうに……!? ちょっとみくるちゃん!!」 みくる「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ハッ!?」 ハルヒ「キョン!」 キョン「ん?どうしたハルヒ?」 ハルヒ「一度しか言わないからよく聞いてなさいよ。……キョンあたしと付き合いなさい! (やったわ!とうとう言ってやったわ////)」 キョン「はあ?何言ってんだお前は?」 ハルヒ「だ、だからあんたのことが好きだって言ってんのよ! (もうバカキョン!察しなさいよ////)] キョン「そういう意味でなくてだな。どうして俺がお前なんかと付き合わねばいかんのだ」 ハルヒ「え?」 キョン「大体だな俺はもう長門と付き合ってるんだ。お前と付きあえるわけが無いだろ」 ハルヒ「う…嘘」 長門「本当」 ハルヒ「有希!」 長門「彼と私は随分昔から恋人関係気づかなかったのはあなただけ」 ハルヒ「そ、そんな…」 長門「鈍すぎる。憐れ」 ハルヒ「有希!あんた…」 古泉「実は僕たちも付き合ってるんですよ」 ハルヒ「!?」 みくる「あのー涼宮さん本当に気づいてなかったんですか?」 キョン「気づいてたら毎日毎日俺たちを部室に集めるだなんて無粋なこと出来やしませんよ」 みくる「それもそうですね。でも、よかったです」 ハルヒ「な、何がよかったの?」 みくる「だってこれからは涼宮さんに気兼ねなく遊びに行けるじゃないですか」 ハルヒ「え…?」 古泉「そうですね。いや~よかった。まさか涼宮さんそれでも僕たちの邪魔をするだなんて言いませんよね?」 ハルヒ「え?あの、その、もちろんよ…」 長門「よかった。これからはいつでもあなたに甘えられる」 キョン「おいおい、長門。俺はいつだってよかったんだぜ」 古泉「さあ、自由になったことだしダブルデートといきませんか?実は知り合いがオープンしたばかりのレストランのディナー券が4枚あるんですよ」 キョン「お、ナイスだ古泉!長門、いや有希もそれでいいか!」 長門「(コクリ)」 みくる「わぁ~楽しみですぅ~」 古泉「では行きましょうか。あ、涼宮さんはお気になさらずにSOS団の活動に励んでください」 キョン「じゃあなハルヒ。お前もいつまでも馬鹿やってないで恋人でも見つけるんだな」 ハルヒ「待ってキョ バタン! ハルヒ「一体何なんだってのよ、もう………。グスン、また一人になっちゃった…」 長門「あなたには羞恥心が足りない…」 ハルヒ「…」 長門「聞いてるの…」 ハルヒ「申し訳ありません…善処します…」 長門「早朝、この部室でしている自慰行為の声も大き過ぎる」 ハルヒ「…今後注意します…」 長門「何より彼に対する好意が露骨…過剰…目障り…」バキ! ハルヒ「…」 長門「…この状態が続くようなら薬の投与を増やさなければならない…」 ハルヒ「…」 みくる「でもでも長門さん、これ以上増やしちゃうと致死量越えちゃいますよぉ?」 長門「構わない」 ハルヒ「…」 みくる「え~?でもお~このブス死んだら私達とキョン君との接点、無くなっちゃいません?」 長門「問題ない…彼は私の虜…もうこの女は用済み…」 ハルヒ「…」 長門「…ふひっ!ころす…ころス…殺す…死ね!死ね!死ね!」 ハルヒ「なんか甘いもの食べたいわね・・・・・・・・・!!!キョン!!ゼリー買ってきなさい!」 キョン「わかった、行ってくる」 ハルヒ「何よ、妙に聞き分けがいいじゃない」 キョン「・・・・・・」 キョン「ほら、買ってきたぞ」 「朝比奈さんには杏仁豆腐。長門、おまえにはムース。あと古泉、バナナプリンで我慢してくれ」 「あと、ハルヒは一口ゼリーだ」 ハルヒ「なかなか気が利くじゃない、そっれじゃあいっただっきまーす!」 ハルヒ「いっただっきまーす!」 パクッ ムシャムシャムシャ ハルヒ「蜂蜜の味かしら?なかなか美味しいわ」 「これなんて名前なの?」 キョン「カブト虫の餌」 ハルヒ「ねえキョン・・・・・夢のなかでしてくれたこと覚えてる?」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「ほら、ポニーテール好きだって言ってキ、キスしてくれたじゃない///」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「あっ、映画撮ったときさ、みくるちゃんが【キョン】「記憶にございません」 ハルヒ「じゃ、じゃあs【キョン】「記憶にございません」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|^ ヮ^ノリ キョンキョ~ン ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「なんだ…用なら後にしてくれないか」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|#゚Д゚ノリ キョンってば!聞きなさいよ!! ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「………」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|゚ ー゚ノリ キョン……ねぇ… ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「…もういい、出て行く」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l| T-Tリ キョン…うぅ… ヾ ノ ハ京ハ くOUUつ 「この中に、宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい。以上」 「…涼宮」 「何よ」 「鏡を見てみろ、宇宙人が映ってるぞ」 ハルヒ「みくるちゃん、お茶!」 みくる「はぁ~い、ただいま」 キョン「おいハルヒ…上級生に頼むならもう少し丁寧な物言いをしたらどうだ。すみません、朝比奈さん」 ハルヒ「あたしは団長だから一番偉いの。学年なんて関係ないわ」 みくる「お待たせしました、どうぞ…キョン君はこっち、涼宮さんはこっちです」 キョン「ありがとうございます。美味しいですよ」 ハルヒ「なにこれ、あたしのは水じゃないの?!」 キョン「えぇ?」 みくる「ふふ、生意気な下級生はカルキ臭い水道水でも飲んでろですぅ」